研究課題/領域番号 |
22K10169
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮脇 卓也 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (00219825)
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研究分担者 |
樋口 仁 岡山大学, 大学病院, 准教授 (30423320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル / 抗炎症作用 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
電位依存性チャネルのひとつである過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channels: HCNチャネル)には、HCN1、HCN2、HCN3、およびHCN4のサブタイプがあることが知られている。本年度の研究では、培養したマウスマクロファージ様細胞(RAW264.7細胞)におけるHCNチャネルサブタイプの遺伝子発現を確認し、特定のHCNチャネルサブタイプ遺伝子をノックダウンすることで、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)による抗炎症作用がどのHCNチャネルサブタイプを介しているかを調べることを目的した。RAW264.7細胞からRNAを抽出し、逆転写反応により得られたcDNAを、HCNチャネルのサブタイプであるHCN1、HCN2、HCN3、およびHCN4の遺伝子(mRNA)発現を同定した結果、RAW264.7細胞にはHCNチャネルサブタイプのうちHCN2およびHCN3チャネル遺伝子が主に発現していることがわかった。さらに、LPSやイバブラジンの添加が、これらの遺伝子発現に影響がないことを確認した。次に、LPSを添加して培養したRAW264.7細胞に対して、イバブラジンを添加した場合の、炎症性メディエータ(TNFalpha, IL-6)の産生に対する影響を調べた結果、イバブラジンはこれらの炎症性メディエータの産生を抑制したが、HCN2チャネル遺伝子に対して特異的なsiRNAを導入して、HCN2チャネル遺伝子をノックダウンしたところ、炎症性メディエータ産生の抑制がリバースされたことから、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)の抗炎症作用はHCN2チャネルを介している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養したマウスマクロファージ様細胞(RAW264.7細胞)において、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channels: HCNチャネル)のサブタイプであるHCN1、HCN2、HCN3、およびHCN4のうち、どのサブタイプが発現しているかを同定すること、また、LPSによる刺激やHCNチャネル阻害薬の添加が、HCNチャネルサブタイプ遺伝子の発現に対してどのような影響があるかを調べること、LPSを添加して培養したRAW264.7細胞に対して、HCNチャネル阻害薬を添加することによる炎症性メディエータの産生に対する影響を調べ、その作用がどのHCNチャネルサブタイプを介しているかを調べることを計画した。その結果、RAW264.7細胞にはHCNチャネルサブタイプのうちHCN2およびHCN3チャネル遺伝子が主に発現していること、LPSやHCNチャネル阻害薬であるイバブラジンの添加は、これらの遺伝子発現に影響がないこと、LPSを添加して培養したRAW264.7細胞に対して、イバブラジンを添加した場合、炎症性メディエータであるTNFalphaや IL-6の産生は抑制されたが、HCN2チャネル遺伝子をノックダウンしたところ、これらの産生の抑制がリバースされたことから、HCNチャネル阻害薬の抗炎症作用はHCN2チャネルを介している可能性が示唆された。以上の研究成果から本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)が、HCNチャネルサブタイプであるHCN2チャネルを介して炎症性メディエータ(TNFalpha, IL-6)の産生を抑制し、抗炎症作用を有していることが示されたが、その機序については不明のままである。そこで、本申請者は、HCNチャネルが陽イオンチャネルであり、ナトリウムイオン以外にもカルシウムイオンが内向きに通過するため、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)がカルシウムイオンの通過を阻害している可能性が考えられる。そこで、今後の方針として、カルシウムイオンの動態を評価し、HCNチャネル阻害薬(イバブラジン)が、RAW264.7細胞内のカルシウムイオン動態に及ぼす影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費等の購入について予定より節約できたため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、次年度、細胞内カルシウムイオン動態の評価等に必要な費用に充当する。
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