研究課題
そこで、本研究課題は、口腔扁平上皮癌におけるヘミデスモソーム(細胞-基質間接着装置)構成蛋白である BP180の発現制御機構(正常組織とのメカニズム異同)解析、さらにそのリガンドの 同定を行い、口腔癌の浸潤過程におけるBP180の役割を追究し、癌進展におけるBP180の分子基盤を明らかにすることを目的としている。前年度までに、培養細胞を用いた実験により、BP180発現制御が野生型p53のみならずmiR-203a-3pによっても行われていることを証明した。そのため、これらの実験結果をふまえ、口腔癌におけるBP180、野生型p53、変異型p53、miR-203a-3pの連関と発現制御の相互性について、ヒト正常歯肉細胞株、口腔癌細胞株を用いた強制発現系・ノックダウン実験、転写解析(プロモーター解析実験)を行なった。また、実際のヒト口腔癌組織においてもin vitroで証明された関係が成立しているか検証を行い、BP180 の発現制御機構を解析した。当該年度は上記解析の詳細を引き続き解析するとともに、BP180の様々な欠失変異体を作成し培養細胞に導入することで、ヘミデスモソームへの組み込みに対する影響を解析し、基底膜成分の存在あるいは非存在下で、 ヘミデスモソーム構成因子の局在を解析した。現在までの解析結果から、BP180の転写誘導には、野生型p53 、変異型p53、miR203a-3p の両者が相互に関与していること、癌組織におけるBP180が、接着装置因子としてだけでなく基底膜の形成や維持にも寄与していること、さらに、癌の浸潤機構には当該システム崩壊が深く関わっていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
予定している実験計画を順調に遂行できている。
作成しているBP180の様々な欠失変異体を培養細胞に導入し、それぞれの変異体導入時におけるヘミデスモソーム構成効率、細胞接着能力、細胞運動能、浸潤能 の評価を2Dおよび3Dの細胞培養系で行う。さらに、これまでの実験結果から、癌組織におけるBP180が接着装置因子としてだけでなく、基底膜の形成や維持にも寄与していることや、癌の浸潤機構にはそのシステム崩壊が深く関わっていることを明らかにする。
R5年度の年度末に行なった研究成果発表(国際学会での発表)の学会参加費および旅費について、通貨レート変動に対する調整を可能としておくため、次年度使用額が発生した。当該使用額は、次年度初頭における消耗品経費として充当することで、研究進捗に支障はない。
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