研究実績の概要 |
本研究の目的は、慢性移植片対宿主病:Graft-versus-host-disease (GVHD)などの免疫過剰反応疾患に対して歯髄幹細胞が有する再生環境整備機能の有用性を検討することである。 本年度では、歯髄幹細胞を80%コンフルエントまで培養し、この時点でIFN-γを200 ng/mlを培養液に加えて24時間培養後、新鮮培養液に交換し、さらに24時間培養後に培養上清を回収した。INF-γ刺激下歯髄幹細胞の培養上清をGVHDの発症機序に中心的に関わっているTh17細胞に関連するサイトカイン(GM-CSF, IFN-γ, IL-1b, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-10, IL-Rp70, IL-13, IL-17, IL-17F, IL-21, IL-22, IL-23, IL-28, MIP-3a, TGF-beta, TNF-arfa, TNF-beta)の産生量について抗体マイクロアレイにて検討を行った。その結果、培養上清およびINF-γ刺激下培養上清では、IL-2, IL-21, IL-23, TNF-betaは培養液単体と比較して経時的に有意に減少した。一方、IL-6と INF-γ値は上昇した。この結果より、これらの因子が免疫疾患の抑制に関与する可能性が示唆された。 また脾臓細胞移入により作成した慢性GVHDマウスに各培養上清を1か月間投与し、その効果について顎下腺を摘出して組織学的に検討した。その結果、GVHDマウスの顎下腺の導管周囲にリンパ球浸潤を一部認めた。しかし、培養液のみ、培養上清、INF-γ刺激下培養上清を投与した群との差は認められなかった。現在、口腔粘膜、肝臓、腎臓の組織切片を作成し、組織学的検討を継続している。
|