研究実績の概要 |
・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は, 2017年より頭頸部癌の再発あるいは転移症例において単剤あるいはFPとの併用療法で導入されてきた. 特に再発口腔癌では, 緩徐に変化するICI投与後の治療効果や、ICIから殺細胞性抗癌剤, 分子標的治療薬へのスイッチングについて慎重な見極めが必要である. また投与期間にもついても規定が見当たらなく, ICIは治療開始から腫瘍免疫応答を引き起こすまで一定の期間を要する遅発性効果を示し,さらに投与終了後も腫瘍が残存していながら病状の進行あるいは縮小がないまま病状の安定が得られる持続効果があると考えられる. 本研究において, 再発口腔癌におけるICIの治療効果予測規定因子としてPD-L1, 腫瘍浸潤リンパ球(TIL),がん関連遺伝子変異を, 臨床検体をもとにそれぞれについて検証してきた. ・まず初めに, PD-L1の不均一性が明らかとなった. すなわち生検部によってPD-L1の発現量に差があり動的な変化を示す可能性が示唆されたため, PD-L1とがん関連遺伝子変異の相関について検索した. 再発口腔癌においては, がん微小環境下でがん細胞の浸潤, 転移, 腫瘍細胞と直接対峙しているリンパ球の浸潤が必要で, PD-L1の発現とICIの治療効果に相関は認められなかった. つぎに、TILの表面マーカーCD3、CD4/CD8、さらにTreg同定のためのCD25/FoxP3の発現に着目した. 臨床検体で癌浸潤先端部でCD8の免疫染色を行い、CD8陽性T細胞がICIの治療効果と相関するかを検証した。PD-L1の発現は動的であったが, リンパ球の浸潤が強い症例5例ではPD-L1の発現も相関して高発現し, そのうち2例で治療効果が持続した. つまりT細胞の浸潤に伴い, PD-L1も上昇しResponderでPD-L1(+),CD8+T細胞(TIL)との結果であった. ・最後にがん関連遺伝子変異においては、ResponderでNOTCHシグナルに関する遺伝子異常を認め, NOTCH1,2遺伝子変異とICIの治療効果の分子メカニズムを明らかにする.
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今後の研究の推進方策 |
NOTCH1高発現株であるHo-1-u-1とSASにおいて、NOTCH1とNOTCH2のスプライシングバリアントにアミノ酸の変異を認めた. 変異部位を含めたネオエピトープを作成し, 患者血漿より分離したCD8陽性T細胞を共培養してT細胞の活性化を評価する. さらにTreg同定のためのCD3, CD25/FoxP3の免疫染色を行い, 免疫細胞におけるICI分子の発現を陽性細胞率と染色強度から総合的に評価する.
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