研究課題/領域番号 |
22K10213
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中禮 宏 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 講師 (50431945)
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研究分担者 |
上野 俊明 明海大学, 歯学部, 教授 (30292981)
林 海里 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30803192)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 顎顔面骨骨折 / 骨強度 / 有限要素法 / デジタルマッチング法 |
研究実績の概要 |
「顎顔面骨における骨折時の骨強度」の指標になりうる骨強度評価値を明らかにするために、鼻骨骨折、頬骨骨折、上顎骨骨折のCT(Computed Tomography)画像情報を基に、受傷した状態での強度評価に関して、昨年度に引き続いて過去の症例データを収集・検討を行い、健側との比較で、基礎データを蓄積した。 顔面骨折症例の受傷状態をX線CTデータから抽出し、受傷状態の強度評価のために有限要素解析(CT-based finite element method :CT/FEM)を行うためのデータ蓄積を解析した。多角的な骨強度評価に繋げるために、CT/FEMに加えてCAD(Computer Aided Design)技術を応用した分析も行うことの検討・打ち合わせを開始した。CAD デジタルマッチング法を用いて、健側との比較による受傷による形態的変位量評価を行うことを目的に、デジタル情報を変換して、そのデータ蓄積も行った。部位や傷害の重症度に合わせて、従前測定条件が異なることが確認されていたので、同一機器で測定条件が異なった場合のデータおよび別機関で測定した似通った測定条件のデータを比較・検討し関連する研究発表を行った。 データ蓄積は専用ソフトを用いることで精度の向上を図り、骨形状、骨密度を反映した解析用モデルをデモ作成し、シミュレーション分析の条件設定の検討を行った。症例ごとの即時解析に適したシミュレーションシステム構築に向けたデータ蓄積に必要なCT撮影条件の確認の精度向上を行った。 さらに、「顎顔面骨折症例の骨強度解析における要素分割の最適化」を課題として、メッシュ密度(数・サイズ・形状)と部分的細分化を要因とした検討を開始した。そのための至適条件の検討として、「精度維持(細かさ・分割数を増やす)」と「解析時間短縮(細かさ・分割 数を減らす)」について、要因:・細かさ(数)、・分割数(要素数,節点数)、・要素の位相(形状)を検討し、FEM解析についての準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
部位や傷害の重症度に合わせて、同一機関の同一機器であっても、測定条件が異なることは、事前にも確認はしていたが、事前に想定していた以上に条件のばらつきが大きく、データ蓄積のための比較検討に難渋した。そこで、同一機器で測定条件が異なった場合のデータについて、比較や別機関で測定した似通った測定条件データの比較などをデータ蓄積条件に加えることで、データの精度を上げることとしたため、データ蓄積・分析に時間を要した。そのため、当初から遅れ気味であったことも相まって、進行状況はやや遅れている。 有限要素解析やCADデジタルマッチング法の精度を落とさずにデータ分析を行うためのデータ処理方法は、未だ確立していなかったが、その処理を補完する方法を検討できるようになってきたため、課題の進捗は遅れていると言えるが、その遅れは解消可能と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度より行ってきた顔面骨折症例の受傷状態のデータ蓄積は、今後も継続して行っていく。 本年度以降、当初は「骨折後の定期的治癒状況 骨強度評価」を課題として、協力者を募り、骨折直後から定期的に治癒に伴う骨強度評価・骨代謝状況(骨代謝 マーカー)も参照しながら、治癒に伴う回復・変化を評価(CT/FEM、CAD)する予定であったが、倫理的配慮から、再検討することとする。その一方で、まずは「顎顔面骨折症例の骨強度解析における要素分割の最適化」を課題として、メッシュ密度(数・サイズ・形状)と部分的細分化を要因とした精度と解析時間の 関係性の検討すること検討を進め、そのための基礎的解析を進めていくことに注力することとする。即時解析・診断のための至適条件の検討として、「精度維持(細かさ・分割数を増やす)」と「解析時間短縮(細かさ・分割 数を減らす)」は、相反するが、重要な要素となるので、要因:・細かさ(数)、・分割数(要素数,節点数)、・要素の位相(形状)を変えて検討したうえで、至適条件でのFEM解析を行う予定とする
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度実施計画の「顔面骨折症例の受傷状態での骨強度評価」について進展があり、既に過去症例のCTデータの詳細確認という成果を得ていた。その一方で、昨年度以降に予定していた「STLデータのメッシュ密度(数・サイズ・形状)と部分的細分化」を前倒して実施できず、本研究目的である「顔面骨折症例の受傷からの回復評価指標の策定」のための本格的なFEM解析は開始できなかった。以上より、本研究の進展の遅れに伴い、当初は令和5年度に実施予定であった「顔面骨折症例」のFEM解析の実施を、至適条件を確認しながら、次年度(本年度)に繰り越して行うことすることとした。
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