研究課題/領域番号 |
22K10218
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研究機関 | 神戸常盤大学短期大学部 |
研究代表者 |
森谷 徳文 神戸常盤大学短期大学部, 口腔保健学科, 教授 (60467751)
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研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (00228488)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
近藤 星 岡山大学, 大学病院, 医員 (90834838)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 軟骨ホメオスタシス / 非コードRNA / 変性メカニズム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2つの非コードRNA, miR-18aおよびUrothelial cancer-associated (UCA)1の軟骨分化における正負双方向の協調した調節機構を検証し、さらに軟骨組織の変性時におけるこれら非コードRNAの役割を解明することである。研究初年度(2022年度)は、当初の研究計画に基づき培養細胞での検証と並行してin vivoでの解析のためのUCA1ノックイン (KI) マウスの系統確立とその表現型解析を行なった。 1. UCA1のmiR-18aおよび軟骨分化促進因子Cellular Communication Network Factor (CCN) 2の発現への関与を検証するため、軟骨細胞株HCS-2/8にUCA1発現ベクターを導入し、軟骨分化マーカー遺伝子の発現を経時的に検討した。その結果、これまでの癌細胞での報告と同様に、UCA1によるmiR-18a発現抑制作用が確認された。また、UCA1によるCCN2, Sox9遺伝子の発現誘導および軟骨細胞の変性時に認められるACAN, COL2A1遺伝子の発現低下も認めた。 2. 癌細胞ではUCA1の発現抑制効果の報告されている、糖尿病治療薬メトホルミンをHCS-2/8細胞に添加し、経時的な遺伝子発現を解析したところ、UCA1の発現は上昇した。 3. UCA1は霊長類特有のlncRNAでマウスには存在しない。UCA1 KIマウスを作製すればin vivoでのUCA1の生理的・病理的役割の解明に直結する。我々はCRISPR-Cas9システムを用いてUCA1 KIマウスを作製し、系統確立に成功した。表現型解析の結果、当初の予測に反し、骨や生殖器などUCA1発現が影響すると思われた部位には明らかな組織学的・形態学的な変化は認められなかった。今後、骨―軟骨組織の形態学的・生化学的解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度である2020年度は、培養軟骨細胞とマウスの両方で当初の計画通り順調に実験が遂行できた。特に、軟骨細胞におけるメトホルミンのUCA1誘導効果は過去に報告がなく、UCA1遺伝子発現が細胞種に依存するという新発見である。また、UCA1 KIマウスの作製の成功およびその系統確立も他に例がなく、今後、さらに形質解析を進めて論文化する予定である。 上記の通り、研究初年度にも関わらず、in vitroおよびin vivoの実験の両方で大きな成果を上げることができ、いずれもその成果を論文化する準備にすでに入っているため、研究計画当該年度の進捗状況は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨細胞におけるメトホルミンによるUCA1誘導効果およびUCA1 KIマウスについては、研究成果をまとめて近日中に論文化し、投稿する予定である。 2023年度についても培養細胞およびUCA1 KIマウスでの検証を引き続き進めていく予定である。 メトホルミンによるUCA1, miR-18a発現誘導の主要制御因子を同定するために、メトホルミンを添加した軟骨細胞を用いてRNA-seq解析を行い、メトホルミン投与時に発現変動の大きい遺伝子と、その中で転写因子であるものを絞り込む。ターゲット遺伝子をいくつか選択し、各遺伝子産物がUCA1, miR-18aそれぞれの遺伝子に直接結合するかどうかをChIP-qPCR解析により調べ、主要制御因子を同定する。 また作製したUCA1 KIマウスの膝関節内にモノヨード酢酸を注射してOAモデルを作製し、組織学的・形態学的な解析と遺伝子発現およびECMタンパク質の定量解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は軟骨およびCCNファミリー研究に精通した複数の研究者により分担して遂行するよう計画しており、その進捗状況には問題ないが、研究代表者である森谷の他大学への異動に伴い、手続きの関係で、研究経費のうち分担者割り当て分が分担者の所属大学へ計上されるまでに時間を要した。このため、外部の業者に解析を依頼するものなど高額になる実験については、後回しにせざるを得ず、次年度使用額が生じた。 次年度は、今年度の余剰金を最大限活用し、今年度できなかった解析の外注を含む実験を中心に遂行するとともに、本研究課題を通して得られた研究成果を論文にまとめて発表する予定である。
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