研究課題/領域番号 |
22K10228
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 弘 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70304813)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨基質 / 神経保護 / オーファン受容体 / オステオカルシン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、骨で最も多いタンパク質であるコラーゲンを除けば主要なタンパク質成分であるオステオカルシン(OC)を感知する受容体GPR158が、末梢神経保護作用および神経障害性疼痛の病態形成に関与する可能性を検証し、その分子基盤を明らかにすることである。令和4年度は神経系におけるOC受容体の発現分布と神経細胞における神経伝達物質の発現・分泌に対するOCの影響の有無について検討した。異なるOC受容体GPR158およびGPCR6Aそれぞれの抗体を用いて免疫組織染色をおこなったところ、マウス三叉神経節ではOC受容体のうちGPR158が比較的高い発現を示した一方、GPRC6Aはほとんど発現を認めなかった。次に、GPR158の発現が確認された培養神経細胞様細胞を用いてOC添加の有無による神経伝達物質の発現・分泌の変化を調べた。OC添加によりノルアドレナリン分泌が増加した。一方、神経障害性疼痛の病態形成に寄与するとされるBDNFの細胞内の発現量は増加した。 これらの結果はOCが、神経細胞に存在する受容体GPR158に結合し、神経伝達物質の発現・分泌量を調節することを示唆しており、特にBDNFの作用抑制は神経障害性疼痛の病態形成に抑制的に作用しうることが考えらえる。本研究は、骨の成分であるOCの受容体GPR158を介した神経障害性疼痛病態形成への影響と末梢神経保護作用を明らかにし、通常の消炎鎮痛薬や麻薬性鎮痛薬が効きにくく、有効な治療薬が少ない慢性疼痛である神経障害性疼痛の新たな予防・治療戦略の開発に寄与することが多いに期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である令和4年度は、本研究が対象とする受容体GPR158の三叉神経節での発現を実際に確認し、また培養細胞レベルでオステオカルシンがGPR158を介してBDNFなど神経障害性疼痛の発症に関与する神経伝達物質の発現・分泌量の制御に関与することを示唆するなど研究遂行上の基礎データは得られた。一方、本研究ではGPR158遺伝子改変マウスを用いて同受容体の神経障害性疼痛の病態形成への関与を調べるが、所属機関の動物飼育施設の補修工事の影響もありマウスの準備が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
所属機関の動物飼育施設の利用も再開したのでGPR158遺伝子改変マウスの準備を進める。準備が整うまで、初年度に細胞培養系で得られた結果を細胞レベルで遺伝子ノックダウン等によりGPR158の役割の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の動物実験施設の改修工事のため使用予定の遺伝子改変マウスの搬入時期が先送りとなったため。
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