研究課題/領域番号 |
22K10271
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河野 加奈 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40780862)
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研究分担者 |
早野 暁 岡山大学, 大学病院, 講師 (20633712)
山城 隆 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (70294428)
上岡 寛 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80253219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 軟食 / 顎骨形態 |
研究実績の概要 |
本研究では、塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の変化であるエピジェネティクスという概念に基づき、顎骨形態決定に関わる遺伝情報のエピジェネティックな制御システムを明らかにし、その下流に存在すると思われる、顎骨形態形成の鍵になる遺伝子を同定することで、後天的な不正咬合の原因となる分子機構を解明することを目的としている。 これまでに、実験的不正咬合モデルマウスの作製に成功している。モデルマウスの咬筋組織からサンプルを回収し、その咬筋組織の性質が、軟食では遅筋の性質が増し、Myh遺伝子群の発現様態に変化が生じることを確認した。ヒトにおいてもマウスにおいても顎態の変化にMyh1、Myh2の発現が関与しており、とくにハイアングル、オープンバイト症例においてMyh1、Myh2は減少することが示唆された。 またモデルマウスを用いた下顎骨の形態評価から、生後3から9週の間で食餌性状を一度変化させ、その後元に戻すことでキャッチアップ現象が生じるが、一定時期を超えるとキャッチアップ現象が生じなくなることも見出した。 さらに食餌性状の違いがマウス顎骨の形態に及ぼす影響を詳細に検討するために、主成分分析を使用して、サンプル全体のトポロジー変化を分析し、軟食サンプルと硬食サンプルの形態学的差異を説明する要因を特定した。これらの分析結果に基づき、正準判別分析を用いて、軟食サンプルと硬食サンプルの違いを説明する形態学的特徴を特定した。 なお、現在はクロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証中である。これまでは咬筋サンプルからの咬筋細胞を用いて解析を進めていたが、咬筋細胞の採取が困難である可能性もあるため、組織からも解析を試みていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験的不正咬合モデルマウスからの形態評価は順調に進行している。 さらに、食餌性状を変化させることでMyh遺伝子群の発現様態に変化が生じることも見出している。 今後はクロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する予定であるが、咬筋サンプルからの咬筋細胞の採取に時間を要しており、まだオープンクロマチン領域を同定するには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後はクロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する予定である。これまでは咬筋サンプルからの咬筋細胞(50,000から 100,000 個の新鮮な細胞)を用いて解析を進めていたが、咬筋サンプルからの咬筋細胞の採取が困難である可能性もあるため、組織からも解析を試みていく予定である。また、研究状況をみて委託解析も考慮する。 さらに、これまでの研究で硬食と軟食で飼育したマウス咬筋のRNAを用いてマイクロアレイを行い、これらの刺激に応答する遺伝子群を同定に成功しており、こらの遺伝子群の発現領域は、7番染色体の320000~350000の領域に集中していることが明らかになっている。この領域から発現しているmRNAの情報を明らかにするため、次世代シーケンサーを用いたRNAシーケンス法を用いて、咬筋組織において本領域より転写産生されたmRNAのエクソン構造と遺伝子配列を同定する。この時、固形餌と粉末餌でそれぞれ飼育したマウスのサンプル間比較を行うことで、エピジェネティックな制御がなされている領域も特定することができる。以上で得られたゲノムの転写状況、ならびにクロマチン活性化様態の網羅的データを比較解析し、固形餌と粉末餌のどちらかで限定的に発現される遺伝子群の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
クロマチンの展開部位をATAC-sequence法を用いて解析し、これらの制御がエピジェネティックなシステムを介しているかどうか検証する予定であるが、これまでは咬筋サンプルからの咬筋細胞(50,000から 100,000 個の新鮮な細胞)を用いて解析を進めていたが、咬筋サンプルからの咬筋細胞の採取に時間を要しており、解析まで至っておらず、次年度使用額が生じている。 そのため、咬筋細胞からの解析が困難である可能性も考慮し、組織からの解析も試みていく予定である。また、研究状況をみて委託解析も考慮する。 また、COVID-19の影響があり国際学会等へ参加できていないことも次年度使用額が生じた理由の一つであるが、次年度は可能な限り学会参加を行い、情報発信および情報交換の場として活用していきたいと考えている。
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