研究実績の概要 |
本研究ではバイオガラスナノ粒子(BGNP)によるエナメル質の再石灰化機能を向上させるため、ペプチドフォルダマーとの複合体を創製し、ミネラルとの結合性、分解および結晶形成能の向上を試みる。さらに、BGNPとクラウンエーテルの複合体を創製し、選択的ミネラルの包摂特性を光照射により制御することを目指した。 BGNPと各種ペプチドフォルダマー(ピリジンをベースにCaを結合する)を合成し、形態観察や構造評価を行った。核磁気共鳴(NMR)とフーリエ変換赤外分光(FTIR)によって各フォルダマーの特性を評価した。BGNPはゾルゲル法で合成し、FTIRとエックス線回折により特性を評価した。走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてBGNPを観察した。3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ATPS)を用いてBGNPに表面官能基を付与することにより機能化をはかり、SEM観察とエネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成分析、XRDおよびX線光電子分光法(XPS)による特性評価を行った。 NMRとFTIR測定により、異なる位置にピリジンを持つ5つのフォルダマー(F1, F2, F3, F4, F5)の構造を確認した。XRDによりBGNPのアモルファス構造が確認され、EDSでは組成(SiO2:CaO:NaO2:SrO:P2O5 = 46.1:19.3:27.0:5:2.6 mol%)が確認された。フォルダマーによるBGNP表面の機能化について、EDSおよびXPSにより調べた。SEMでは板状の構造が確認され、フォルダマーが表面に固定化されていることが確認された。XRDでは、機能化後もアモルファスが維持されていることを確認した。 ナノインデンテーション試験による脱灰エナメル質の再石灰化試験では、F1が有意に高い機械的特性の回復を示した。
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