研究課題/領域番号 |
22K10293
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
関亦 明子 福島県立医科大学, 看護学部, 教授 (50321823)
|
研究分担者 |
関亦 正幸 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80250190)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 唾液腺 / 放射線照射 / 唾液分泌低下 |
研究実績の概要 |
がん治療において有害事象のひとつである唾液分泌障害は予防が第一であり、支持療法として唾液腺防護剤をがん治療時に同時に使用することが効果的である。唾液腺防護剤の開発には、唾液腺の機能を可視化・数値化できる唾液腺培養系と薬効の検証のために動物モデルが必須となる。そこで、我々はがん治療で特にその傷害が問題となる耳下腺とその機能を反映するアミラーゼ分泌に注目して、これまでに“蛍光耳下腺マウス”を作製した。本研究では、長期培養で唾液分泌能が低下するというこれまでの問題点を克服し、唾液腺の機能を可視化・数値化できる光る耳下腺培養系をこの蛍光耳下腺マウスから単離した耳下腺細胞を利用して構築することと、マウス個体を放射線障害の動物モデルとして確立することで、既知の抗酸化剤の唾液腺防護効果を判定することを目指している。 本年度は、放射線障害モデルマウス作製のための条件検討を行った。検討した事項は、1)実験に使用するマウスの週齢と性別、2)照射するX線の強度、3)X線照射後の飼育日数、4)唾液腺組織傷害の程度、5)傷害を判定するために用いる指標について、であった。その結果、1)使用するマウスは8週齢のICRメスとした。2)放射線の強度は10 Gyから30 Gyまでとしたところ10 Gyでも唾液分泌低下や体重の低下がみられていた。3)X線照射後の飼育日数は30日までとした。30 Gyの照射でも30日後にマウスの生存が確認された。4)唾液腺組織傷害はこれまでに肉眼的には観察されていない。5)今後、組織の免疫染色によるアポトーシスやDNA損傷の程度の可視化、繊維化の程度を観察する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、実験室に隣接するビルの建設工事のため、実験室全体の引っ越しを余儀なくされ、細胞の培養実験ができなかった。しかし、動物実験施設や動物実験室を使用したマウスの実験は可能であったため、放射線による唾液腺傷害モデルマウス作製に重点をおいた。
|
今後の研究の推進方策 |
放射線による唾液腺傷害モデルマウス作製に向けて、本年度の検討事項を引き続き実施する。具体的には、1)照射するX線の強度(メス8週齢において、10 Gyでも唾液分泌の低下が観察されたためさらに強度を下げて実施する。)、2)X線強度による唾液腺組織傷害の程度、3)傷害を判定するために用いる指標の決定などである。 また、唾液腺細胞の保存方法の確立と、長期培養唾液腺細胞の分化能の維持について観察する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の予定額の93%を使用し、残額は7%程度であり少ないので、次年度の助成金と合わせて予定の実験の遂行に使用する。
|