研究課題/領域番号 |
22K10309
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 量晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60585719)
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研究分担者 |
吉見 佳那子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90822560)
戸原 玄 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 教授 (00396954)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 栄養吸収 / 栄養代謝 / とろみ調整食品 / ラット |
研究実績の概要 |
誤嚥性肺炎や低栄養を予防するため食物や水分にとろみ調整食品を使用することがあるが、それに添加されているキサンタンガムは脂質吸収の抑制や血糖値上昇抑制効果があることが指摘されている。しかしながら、摂食嚥下障害患者を対象として使用される食品としての栄養学的な検討はなされていない。またとろみ調整食品と薬剤吸収の関連性を調べた研究成果は報告されているが、栄養吸収と代謝に関する解析はされていない。本研究は、とろみ調整食品の長期投与により(1)栄養状態が変化するか明らかにすることと(2)消化管ホルモンの栄養吸収や代謝に関する基礎的データを取得することを目的とする。 初年度は、6週齢のSprague-Dawley(SD)ラットに、キサンタンガム系とろみ調整食品を生理食塩水に溶解し5週間摂取させた。また5週後に消化管を採取し、インスリン分泌に関わるGLP1遺伝子発現量をqPCR法を用いて解析した。その結果、とろみ調整食品摂取により回腸のGlp1遺伝子発現が増加していた。また、次世代シークエンシングによる回腸の遺伝子発現と腸内細菌叢の網羅的解析により、とろみ調整食品の長期摂取で回腸の糖・脂質代謝関連遺伝子発現量と腸内細菌叢の変化が起こることを明らかとした。本知見より、キサンタンガム系とろみ調整食品の摂取が糖・脂質代謝を改善する可能性が示唆された。本研究の成果は、摂食嚥下障害患者のトロミ調整食品使用に関する基礎的データを蓄積し、摂食嚥下リハビリテーションの分野における患者の栄養管理計画立案に寄与するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的(2)の消化管ホルモンの栄養吸収や代謝に関する基礎的データを取得することについて、若年ラットを用いた基礎的データ採取と解析を実施した。プレスタディの論文は国際誌に投稿し受理された。予定通り、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
とろみ調整食品の長期投与により栄養状態が変化するか明らかにする。老齢Sprague-Dawley(SD)ラットを馴化させ、固形飼料と水分を自由摂取させる。それに加えて生理食塩水で5%濃度に調整したとろみ水(とろみ群)および生理食塩水(コントロール群)をそれぞれ4mlずつ経口ゾンデを用いて毎日強制経口投与する(各10匹)。この飼育環境で高齢期(96週)まで持続して飼育可能か検証する。ラットの活動量低下、異常脱毛などが予想され、通常飼育が困難な場合は、飼育方法やとろみ水の摂取方法を再検討する。飼育中、毎日体重を測定し、飼育開始日をゼロとして体重増加率(%)を算出する。とろみ群はコントロール群と比較して体重増加率が低値を示すことが予想される。飼育終了時点でラットを解剖し、肝臓、腎臓、脂肪重量の測定および血液を採取して生化学検査を実施する。各臓器および脂肪重量は、とろみ群がコントロール群と比較して低値を示すことが予想される。また血液生化学検査から、総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)、中性脂肪(TG)、グルコース(Glu)などの栄養に関連する指標を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験に必要な消耗品の購入、およびデータ解析にかかる費用が必要であり、翌年度分の助成金と併せて使用する予定である。
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