研究課題/領域番号 |
22K10311
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂中 哲人 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (90815557)
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研究分担者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (00303983)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難培養歯周病菌 / Fusobacterium / 種間相互作用 / 栄養共生 |
研究実績の概要 |
次世代シークエンサーの登場により、これまで分離培養が困難であった多くの細菌が歯周病に関与している実態が明らかになってきた。こうした難培養菌は宇宙の暗黒物質になぞらえ、歯周病菌ダークマターとも呼ばれ、その病因論的役割に注目が集まっている。近年、こうした難培養歯周病菌のいくつかの菌種の分離培養が可能になり、基準株が利用できるようになったが、その生育には口腔常在菌であるFusobacterium nucleatumの培養上清あるいは菌体成分が必要不可欠であることが分かっている。本研究では、in silicoおよび独自の共培養メタボロミクス測定系を活用し、F. nucleatumから難培養歯周病菌に提供される扶養因子を探索し、これら難培養歯周病菌のF. nucleatumに対する栄養依存機構および生存戦略を紐解くことで、歯周病菌ダークマターの謎に満ちた生態や病態形成における役割に光をあてることを目指す。 これまでに、F. nucleatumに対する難培養歯周病菌の栄養依存機構について、公共データベースから取得したゲノム情報に基づいてin silico解析を実施し、難培養歯周病菌を支える扶養因子の探索に向けた候補物質のカタログ化を行っている。また、共培養メタボロミクス実験系の構築に向け、理研・微生物材料開発室から難培養歯周病菌を入手し、F. nucleatumとの共培養下で安定的に培養、増殖、集菌ができるよう基礎的な条件検討と最適化を行い、難培養歯周病菌のルーチン培養方法を確立し、次年度以降のメタボローム解析のための実験環境の整備に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム情報に基づくin silicoでの扶養因子の探索については、難培養歯周病菌とF. nucleatumのゲノム情報がKEGG、WikiPathways、MetaCycなどのデータベースから利用可能であり、これらの酵素遺伝子の情報から想定される栄養共生ネットワークをNetCooperateなどのフリーソフトウェアパッケージを用いて推定を行い、重要と考えられるパスウェイやF. nucleatumから供与される扶養因子の候補物質を見出している。また、理研・微生物材料開発室から難培養歯周病菌を入手し、F. nucleatumとの共培養下で安定的に培養できるよう、基礎的な条件検討と最適化を行い、難培養歯周病菌のルーチン培養方法を確立し、次年度以降のメタボローム解析のための実験環境を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、我々が既報で構築した共培養メタボロミクス実験系を活用し、F. nucleatumから難培養歯周病菌へ供与される扶養因子の探索に本格的に着手する。そしてin silico解析と共培養実験で得られた知見に基づき、最終的には、F. nucleatum非存在下で難培養歯周病菌の培養が可能となるような扶養因子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
F. nucleatumとの共培養下で安定的に難培養歯周病菌を培養するための基礎的な条件検討と最適化に向けた取り組みが順調に進み、当初の想定よりも早く、難培養歯周病菌のルーチン培養方法の確立の目途が立ったため。
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