研究実績の概要 |
本年度は、口腔粘膜免疫におけるILC3の同定方法の確立を目的とした。 まずは、ILC3が最も豊富に存在する小腸で、ILC3の採取方法についてWTマウスを用いて様々な検討を行なった。具体的な方法として、小腸から粘膜固有層を採取した後、digestion(CollagenaseⅡ, DNase)を行い、Percoll濃度勾配法を用いて粘膜固有層リンパ球を採取した。次にflow cytometryでは、ILC3分画関連マーカーの検討を行なった。表面抗原マーカーとしてTCRb, TCRγδ, CD4, B220, Rorγgt, Nkp46, CCR6、またはCD3, CD45, B220, Thy1.2, KLRG1, Nkp46, CCR6の抗体染色でILC3を確認できた。上記の方法で繰り返し検討を行い、最も安定してILC3が採取できる方法を確立した。次に口腔粘膜組織にILC3が存在するのか、上顎粘膜組織及び歯周組織を採取し同様の方法で検討を行なった。その結果、小腸粘膜固有層からのILC3と同様の結果を、上顎粘膜組織から得ることができた。 次にILC3の機能的役割を評価するために、口腔粘膜に炎症を誘発させる方法の検討を行なった。炎症を惹起させる歯周病病原菌であるPorphyromonas gingivalis 由来の毒素(LPS)を用いて、WTマウスの歯肉溝に滴下し、免疫応答を経時的(ベースライン、3時間後、1日後、3日後)に免疫染色にて評価した。その結果、ベースライン時と比べて、LPSを塗布してから24時間後にCD4+T細胞・好中球数が有意に増加した (p<0.05)。これらの結果を元に、今後LPS塗布24時間後の歯周組織を採取しILC3の発現を評価していく予定である。
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