研究実績の概要 |
カンジダリシンの電気的性質に着目し、C末端の3つのリシン残基の正電荷と相互作用するポリマー(負電荷をもつヘパリン、ポリアクリル酸)の存在が、カンジダリシンの上皮細胞への結合を抑制し、上皮細胞傷害活性を抑制し、またカンジダリシンによる上皮細胞活性化(細胞内シグナル伝達、IL-8産生)を抑制することを報告した(JOB, 65, 2023)。また、カンジダリシンによって生じる活性化の詳細を検討したところ、NFkBの子ファクターであるIkBzの誘導が生じること、さらにIkBzの発現はカンジダリシンの作用を受けた上皮細胞によるIL-6産生に必須ではないものの、促進的作用を持つことを報告した(JODU, 57, 2023)。 カンジダリシンのC末端に存在する3つのリシン残基は、双生イオンであるため存在する環境のpHによってその電気的性質を変化させる。そこで単球・マクロファージ系細胞であるTHP1細胞を用いて、培地のpHを変化させた時のカンジダリシンによって誘導されるインフラマソーム活性化を検討した。培地のpHが中性あるいは酸性である場合はカンジダリシンによってTHP1のインフラマソームの活性化(ガスダーミンDの活性化で評価)の誘導が確認されたが、培地のpHがアルカリ性ではインフラマソームの活性化が大きく低下した。これはアルカリ条件下ではリシン正電荷が減弱したことにより両親媒性の性質をもつカンジダリシンが疎水性の性質を強くしたために、細胞への吸着・膜傷害活性が低下したことが原因であると考えられる。
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