研究課題/領域番号 |
22K10331
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩崎 正則 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (80584614)
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研究分担者 |
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (10271561)
福田 英輝 国立保健医療科学院, その他部局等, 統括研究官 (70294064)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歯周病 / 老年歯科医学 / 疫学 |
研究実績の概要 |
本研究では65歳以上高齢者約2,500人からなる国内最大規模の歯周病データベースを構築する。これを基盤として、機械学習を利用し、多くの特徴量を組み合わせた大規模・高次元データ解析を行うことで、高齢者歯周病対策の立案と高齢期歯周病疫学研究の進展・エビデンスの創出に資する知見を生み出すことを目指す。具体的な目的として以下の2つを設定した。目的①65歳以上高齢者人口がピークとなる2040年までの高齢者歯周病有病率の将来推計。目的②申請者が開発した日本語版歯周健康状態評価質問紙をベースとした、プロービングによらない高齢期歯周病スクリーニングスコアの開発。 研究2年目である2023年度には歯周病データベースを利用した解析を実施し、高齢者における歯周病と全身の健康に関する知見を海外学術誌を通じて発表した。具体的には、炎症制御する働きがあるとされている血中25(OH)D(ビタミンD)が非線形メンデルランダム化分析によりCRPと非線形な関連を示すことが報告されていることに着目し、高齢者における歯周病と血中25(OH)Dの関連を解析した。 具体的には、東京都板橋区在住高齢者467名(平均年齢73.1歳)を対象に、歯周炎症表面積(periodontal inflamed surface area:PISA)と25(OH)D濃度との関連を制限付き3次スプラインモデルを用いて調べたところ、PISAは25(OH)D濃度と非線形な関連を示した。血中25(OH)Dは炎症や骨代謝を制御する働きがあるとされている。非線形メンデルランダム化分析により血中25(OH)D濃度はCRPと非線形な関連を示すことが報告されている。血中25(OH)Dはある閾値以下になると体内の炎症が制御しづらくなることが考えられ,本研究結果と一致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京都板橋区在住高齢者を対象に実施した来場型健診参加者のうち,現在歯数が2歯以上の者に対して追加で歯周組織検査を実施した。歯周組織検査に基づき歯周炎症表面積(periodontal inflamed surface area:PISA)を算出した。PISAと25(OH)D濃度との関連を制限付き3次スプラインモデルを用いて調べた。年齢,性別,教育年数,喫煙状況,過体重,糖尿病を共変量とした。適格基準に合致した467名(平均年齢73.1歳)を解析対象とした。PISAは25(OH)D濃度が高くなるにつれて急激に小さくなり,その後,減少の幅は小さくなり,やがて平衡状態となった。25(OH)D濃度が27.1 ng/mLより高くなると,25(OH)D濃度とPISAの間の負の関連は認められなくなった。血中25(OH)Dは炎症や骨代謝を制御する働きがあるとされている。非線形メンデルランダム化分析により血中25(OH)D濃度はCRPと非線形な関連を示すことが報告されている。血中25(OH)Dはある閾値以下になると体内の炎症が制御しづらくなることが考えられ,本研究で認められた25(OH)D濃度とPISAの間の非線形の関連と一致している。 以上のとおり,炎症制御や骨代謝と関連する血中25(OH)D濃度は歯周ポケット炎症面積PISAと非線形な関連を示すことを明らかにした。こうした研究成果の発信とともに研究を順調に実施できた。以上より本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はプロービングによらない高齢期歯周病スクリーニングスコアの開発のために機械学習を用い、2022年度学会発表した内容をブラッシュアップしていく予定である。 あわせて、自身が関与している国内の複数の疫学研究にも継続して携わり、歯周病の将来推計モデルの構築と同時に、高齢者におけるペリオドンタルメディシンの解明のための解析を行っていく。 得られた結果は国内および国際学会での発表や学術誌への論文投稿などを通じて積極的に発信していく。なお、研究活動は東京都健康長寿医療センター研究所など外部研究機関と連携をとって行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定よりも研究対象者の数が減少したため、研究費を次年度に使用することとした。東京都健康長寿医療センター研究所など外部研究機関と連携をとって、研究対象者数やデータの質が担保できるよう、進めていく予定である。
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