研究課題/領域番号 |
22K10333
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
箕輪 和行 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (30209845)
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研究分担者 |
亀田 浩之 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70829887)
長谷部 晃 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90281815)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Porphyromonas gingivalis / MRI / エレクトロポレーション |
研究実績の概要 |
MRI造影剤による歯周病菌の効率的な標識方法を確立するため、in vitroで細菌の標識方法、MRI撮像用のサンプル作製方法、MRIの撮像条件を検討した。 令和4年度の実験結果を踏まえ、細菌はPorphyromonas gingivalis(ATCC 33277)を使用し、MRI造影剤はフェルカルボトラン注射液(リゾビスト)を使用した。まず10%グリセロールを用いてP.gingivalisをコンピテント化し、このP.gingivalisにMRI造影剤を投与してヒートショックもしくはエレクトロポレーションを行った。その後、嫌気条件下で2日間培養した。MRI撮像用サンプルを作製した。このサンプルを室温にしてから、研究用3T-MRI装置で撮像した。撮像シークエンスは、T2 map、T2*map、マルチエコー3D-T1強調像を用いた。Matlab上で、定量的磁化率マッピング画像(QSM画像)を計算し、各条件において定量値に有意な変化があるかどうかを検討した。さらに、菌体におけるMRI造影剤の分布位置を確認するため、走査型電子顕微鏡を用いてP.gingivalisの断面像を観察した。 その結果、ヒートショックを行った群、エレクトロポレーションを行った群のいずれにおいてもMRIで造影効果が見られた。ヒートショックとエレクトロポレーション間では造影効果に差は見られず、同程度であった。また、ヒートショックもしくはエレクトロポレーションを行った後に2日間培養した群は、培養前の群と比較するといずれも造影効果が減弱していた。これらを走査型電子顕微鏡で観察すると、ヒートショックを行った群では菌体内に取り込まれているMRI造影剤が多く見られたが、エレクトロポレーションを行った群ではほとんどの造影剤が菌体外に存在していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P.gingivalisをヒートショックもしくはエレクトロポレーションにて菌体をコンピテント化し、MRI用鉄性造影剤で標識できることが示唆された。また、ヒートショックを行うことで菌体内にMRI造影剤を導入でき、エレクトロポレーションよりもヒートショックの方が細菌の標識方法として有用である可能性が示唆された。 細菌内の造影剤の保持期間をいかに伸ばすかが、今後の課題となると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、in vitroの実験として、塩化カルシウム法等でP.gingivalisをコンピテント化してヒートショックを行い、より効率的な標識方法を検討する。また、標識したP.gingivalisを様々な条件下で培養することで、標識が維持されるか確認することも行う。in vivoの実験としては、まずはラット等の動物の歯周病モデルを作製する方法を確立する。さらに、標識したP.gingivalisを歯周病モデル動物の歯周ポケットに投与し、MRI撮像を行い、P.gingivalisの体内動態を観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に進み、試薬費用が少なくて済んだが、実験用動物は未購入にて、資金が余剰分となっている。
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