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2022 年度 実施状況報告書

VR技術を応用した窒息予防プログラムの構築と食事動作の改善効果

研究課題

研究課題/領域番号 22K10345
研究機関明海大学

研究代表者

大岡 貴史  明海大学, 歯学部, 教授 (30453632)

研究分担者 野嶋 琢也  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10392870)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード窒息予防 / VR技術 / 摂食嚥下 / 食事行動 / 喉頭挙上
研究実績の概要

今年度は、健常成人の喉頭挙上や嚥下障害者の喉頭挙上、およびその運動障害などの差異を計測、評価することとした。
まず、嚥下運動を評価する食品の量や形状を統一することを目的に、嚥下内視鏡検査の所見と食品の量、介護食の基準(UDFを採用)との関連を検討した。その結果、食品の量は3gまたは4gが適正であり、それ以上の量になると軽度の嚥下障害者でも嚥下困難感を訴える、咽頭残留が増加するなどの影響が生じた。また、食品の形状ではUDFの「舌でつぶせる」ではほぼ全員が嚥下困難を訴えることはなく、咽頭残留などの異常所見も認められなかった。さらに、喉頭挙上を外部から計測しても「嚥下時の喉頭挙上を見落とす」などのエラーが生じることはなく、健常成人および嚥下障害者の嚥下動作の誘発に適した食品の設定が可能となった。
次に、喉頭隆起の運動を嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査を用いず、非侵襲的に計測する方法を考案することにも着手した。喉頭隆起の垂直・水平的運動量を深度計測カメラで録画し、可能な限り誤差を減少させるための撮影方向、距離などを検討した。その結果、正面から撮影する場合は深度カメラを使用すれば喉頭隆起の垂直・水平成分両方を同時に計測することが可能と判断された。しかし、女性など喉頭隆起が明確でない場合は計測困難となることがあり、精密な計測に当たっての条件設定は今後も継続することとした。
健常成人と嚥下障害者の喉頭挙上の差異について、喉頭隆起の運動を通常のカメラにて録画して計測した。その結果、嚥下障害者の喉頭隆起の運動は垂直運動方向への運動が顕著に減じることが明らかになった。さらには嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査の結果と喉頭隆起の運動との関連を調査したところ、特に「飲みにくい」という感覚では嚥下後の咽頭残留がその感覚に関与すること、顕著な咽頭残留を生じる者は舌骨や喉頭運動の水平成分が減じることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

嚥下障害者の喉頭挙上、特に喉頭隆起の運動の特徴が明確となった。また、喉頭隆起の運動を非侵襲的に計測する方法にもめどが立ち、それをVR技術にて再現する際の重要な点(喉頭隆起の垂直・水平方向への運動を阻害すること)も明示できた。
一方、喉頭隆起など前頸部の運動を嚥下感覚提示装置にフィードバックする面はやや遅れが生じている。これは、嚥下感覚提示装置のサイズが健常成人には適している者の、顎下部のスペースが少ない者には装置の装着が困難なこと、男性と女性で喉頭隆起の大きさなどが異なること、皮膚の運動は制御できても喉頭隆起の運動自体は制御できないことなどの点が影響していると考えられる。
今後はある程度の身長や性別を絞った対象者を選別し、現状の嚥下感覚提示装置のサイズで再現可能な喉頭隆起の運動やその制限が行える装置の開発やプログラムの修正を行う予定である。

今後の研究の推進方策

今後は嚥下障害者の喉頭挙上運動の精密な計測、解析を進めるとともに、その運動を嚥下感覚提示装置により正確にフィードバックし、喉頭隆起の挙上阻害、咽頭残留が生じた際の感覚再現などを行う方針としている。
今回の研究では、嚥下感覚提示装置のサイズダウンなどハード面での修正は主目的とせず、現行のシステムでソフト面を改善して上記の感覚再現や飲みにくさの感覚提示を行うことを主目的とする。そのため、学習プログラムの対象者は顎下に嚥下感覚提示装置の装着ができる者に限定し、喉頭隆起が明確でない者などは除外する方針とする。
規定された食品を用いた嚥下動作のうち、飲みにくさの訴えや咽頭残留が生じない場合の喉頭挙上運動を正常パターン、飲みにくさの訴えがあり咽頭残留や喉頭侵入などの異常所見が生じた場合の喉頭挙上運動をハイリスクパターンとし、嚥下感覚提示装置で喉頭挙上運動を促進する、または阻害する学習プログラムの構築を目指す。
2年目の研究では上記の学習プログラムの修正、嚥下感覚提示装置の実用性を検討し、健常成人に向けた試験運用を開始する。さらに、視覚入力の素材も開発を開始し、実際の食事場面で適切量を口に運んだ場合、過大量を口に運んだ場合などの動画を作製していく。

次年度使用額が生じた理由

2022年度は、嚥下感覚提示装置のサイズダウンを行う可能性があり、デバイス代を計上していた。実際の研究では、嚥下感覚提示装置のサイズを変更する場合は複数のパターンを用意する必要があることから、嚥下感覚提示装置のサイズは変更せずに現状のシステムに適合した対象者を選別することとした。そのため、嚥下感覚提示装置の再開発を行う費用が別の研究費として用いられることとなり、食事場面の視覚入力に用いる動画に使われるマネキン、あるいは窒息時の食物の動きを再現するモデルの準備費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 高齢者・障がい者における食の問題2023

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 雑誌名

      New Food Industry

      巻: 65 ページ: 60-62

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 障害者入所施設における摂食の問題点と食事支援の効果2022

    • 著者名/発表者名
      高野梨沙、大岡貴史、草野緑、進藤彩花、深井智子、竹下玲、申基喆、安井利一
    • 雑誌名

      明海歯科医学

      巻: 51 ページ: 99-108

    • 査読あり
  • [学会発表] 低出生体重児における離乳の 問題に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 学会等名
      日本小児歯科学会
  • [学会発表] CTを用いた地域歯科医院と大学病院の連携と在宅小児患者支援の試み2022

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 学会等名
      日本小児保健学会
  • [学会発表] A case report of a CHARGE association child with satisfactory oral intake2022

    • 著者名/発表者名
      T Ooka, S Yamaguchi, A Tanaka, E Yokota, A Shindo, T Ueda, M Okazawa, M Kusano, A Shigeeda
    • 学会等名
      39th Annual Meeting of JSDO
  • [学会発表] 小児の口腔の形態・機能の発達2022

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 学会等名
      日本老年歯科医学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 要介護者高齢者の咀嚼2022

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 学会等名
      日本咀嚼学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 口腔リハビリテーション2022

    • 著者名/発表者名
      大岡貴史
    • 学会等名
      日本咀嚼学会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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