研究課題/領域番号 |
22K10351
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
武村 幸彦 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任講師 (80573584)
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研究分担者 |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (40247317)
讃岐 拓郎 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (40533881)
城戸 幹太 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40343032)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストレス / 歯科恐怖症 / 薬物行動療法 / 静脈内鎮静法 / アミラーゼ |
研究実績の概要 |
歯科治療の内容は多岐にわたり,患者もどのような治療を受けているかわかりにくい。口腔内の治療は直視できないため不安を増長させる要因となる。研究の目的は歯科治療においてストレス、不安、および痛みを軽減させる方法を確立し評価することである。 2022年度はこれまでの研究に追加して行ってきた。この研究では患者より、静脈内鎮静法の際の末梢挿入静脈カテーテル(PIC)前に15分間透明グラスまたは緑色グラスを着用し、PIC前後の各段階で測定を行った。測定は収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均血圧(MBP)、心拍数(HR)および唾液α-アミラーゼ(sAA)活性を測定し患者のストレスレベルを評価した。患者自身の主観的評価としてVisual Analog Scale(VAS)を用いてPIC中の不安(VAS-A)および疼痛(VAS-P)を測定した。 対照群である透明グラス群ではsAAレベルは、PIC中にベースラインから増加する傾向にあった。sAAの増加は、総唾液タンパク質濃度を増加させる交感神経刺激および唾液流量を増加させる副交感神経刺激を含む自律神経系の活動を反映すると考えられ、痛みを伴う状態および歯科治療のストレスの様々な状況で変化する。これまでの報告と同様にPICによる急性ストレスはベースラインからのsAAおよび知覚ストレスレベルの増加が検出され、これは我々の結果とも一致した。sAA活性は、PIC中のBPまたはHRよりもストレスのより敏感なマーカーでありsAAの測定は、ストレスの評価に役立つ可能性があることが推察された。PIC中のストレス、不安、疼痛レベルに対する短期緑色曝露の影響を緑色グラス着用にて評価し、客観的および主観的な結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定どおり進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
歯科治療前中後の唾液を経時的に採取し、これまでストレスマーカーとして報告されている各バイオマーカーを測定する。同時にバイタルサインの測定も行う。急性ストレス評価はα-アミラーゼを唾液アミラーゼモニターを用いて、慢性ストレス評価はコルチゾールをELISA法を用いて分析する。現在アミラーゼのデータ採取はおおむね終わっており、コルチゾールのデータ採取を始めた段階である。 また、ストレスの主観的評価として術前後アンケートを行い、Visual Analog Scale(VAS)を用いて数値化する。これらの指標から、歯科恐怖症患者の健常人との比較、ストレス変動の傾向、緑色光の効果を分析する。 Patient-controlled Sedation(PCS)も行う予定である。鎮痛作用を評価する指標として、PCSによる鎮痛薬の総使用量を測定する方法がある。これは、患者自身が必要に応じてポンプのボタンを押すことで鎮痛薬を経静脈的に自己投与する方法である。まだ痛いと思えば、押す回数や量が増える。これを静脈内鎮静法に応用し、緑色光による抗不安作用効果があればあるほど、鎮静剤の総投与量は減少するはずである。この方法を用いることで、不安や恐怖という主観的な感覚を数値化することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は予備実験等準備段階の研究が多く、既存の試料や機材等で賄うことができた。2023年度以降の本格的な研究の際にあらためて試料等の準備が必要である。研究の進捗状況はおおむね良好であるが、内容の順番が前後したため差異が生じた。
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