研究課題/領域番号 |
22K10380
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
川上 和宜 公益財団法人がん研究会, 有明病院 薬剤部, 室長 (50775509)
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研究分担者 |
小林 一男 公益財団法人がん研究会, 有明病院 薬剤部, 薬剤師 (10869209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アドヒアランス / 経口抗がん薬 / レンバチニブ / カペシタビン |
研究実績の概要 |
患者が自宅で適切に経口抗がん薬を内服しているか確認できるリアルタイムアドヒアランス・モニタリングシステム(アドヒアランスシステム)の有用性を検討した。本システムの精度を確認するために、地下やビルの高層階で薬を取り出した時にそのイベントをモニタリングできるかを調査した。薬の取り出しからおおよそ15分間のうちにイベントをモニタリング出来た。本研究成果は2023年11月の第33回日本医療薬学会年会で発表した。 2023年は経口抗がん薬のひとつであるレンバチニブについてアドヒアランスについてはPLOS ONEに掲載された(Factors associated with lenvatinib adherence in thyroid cancer and hepatocellular carcinoma, PLOS ONE 18(11) e0294320-e0294320) 。本研究の対象は甲状腺がん、肝細胞がんでレンバチニブを内服している102名の患者である。評価項目はレンバチニブ服用開始後12週以内のアドヒアランス率、アドヒアランス低下要因とした。レンバチニブの1~4、5~8、9~12 週の平均アドヒアランス率は各々92.7、93.3、96.6 %であった。アドヒアランス低下要因は、出血関連事象46 回、高血圧37 回が上位であった。出血関連事象によりアドヒアランスが低下した患者は全て甲状腺がん患者であった。また、カペシタビンのアドヒアランス低下理由を調査し、その結果は薬学雑誌に掲載された(胃がん術後CAPOX療法におけるカペシタビンの残薬評価, YAKUGAKU ZASSHI 143(12) 1075-1081 2023) 。これらのデーターは今後、アドヒアランスシステムを用いて前向き観察研究を行う際の参考データーとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
院内の倫理審査委員会に研究計画書を提出した(2024年1月)。一度目の審査があり倫理審査委員会より指摘があったが、その部分については対応し研究計画書及び患者向け説明同意書を修正した。対象診療科である総合腫瘍科のカンファレンスで研究内容について発表し内容について同意を得ている。 リアルタイムアドヒアランスモニタリングシステムは完成しており、倫理審査委員会から許可があれば実際に患者に対して使用可能である。対象は甲状腺がんの患者としてしている。経口抗がん薬のアドヒアランスとQOL評価表を行う予定であるが、QOL評価体制の準備も進んでおり現実可能なレベルである。 現在、甲状腺がんに対してレンバチニブ治療を受けている患者は20名程度存在しており、医師と協働し薬剤師外来で医師の診察前に面談を実施している。今後、倫理審査委員会で承認が得られれば医師の同意を得て、薬剤師外来で患者と面談時に本研究の同意を得られると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは甲状腺がんに対してレンバチニブを投与継続している患者に対して本研究を実施する。次のステップとして、レンバチニブを新しく開始する患者やダブラフェニブ・トラメチニブ、セルぺルカチニブ、ラロトレクチニブを投与開始患者を対象にして本研究を実施する。 次のステップとして、胃がんに対するS-1、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、腎細胞がんに対するカボサンチニブ等の経口抗がん薬のアドヒアランスを評価していく方針である。特に、投与スケジュールが5日間内服し2日間休薬するトリフルリジン・チピラシル塩酸塩、空腹時に内服が必要であるカボサンチニブ等の服用方法が複雑な経口抗がん薬のアドヒアランスについて本研究を用いて客観的にアドヒアランス評価できると臨床的意義は大きいと考えている。 課題としては本研究では、服薬パックに経口抗がん薬を封入することが必要でありその時間がかかることである。薬剤師のマンパワーは2024年4月段階で十分確保できており、服薬パックに経口抗がん薬を封入することで患者の待ち時間は急激増えないだろうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表や論文発表にかかる費用や設備費が予定していたより金額がかからなかった。次年度以降は学会や論文発表をする予定であり経費かかかると考えられる。 また、設備費も本年度よりは増えると予想している。
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