研究課題/領域番号 |
22K10396
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
岡本 晃典 北陸大学, 薬学部, 准教授 (70437309)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 処方薬 / 地域差 / 公的統計 / オープンデータ |
研究実績の概要 |
政府統計などから医療費の地域差は指摘されており、医療費の削減と併せて解消が望まれている。また、処方内容と医療費の関係性についても報告されている。そこで本研究では、処方内容の地域差に着目し、その地域単位での特徴を捉え、類別し、地域を分類した上で、それら地域ごとの処方内容の特徴に影響する要因を探索し、明らかにすることを目的としている。 初年度である2022年度は、各診療行為と薬剤のレセプト数について地域別に性・年齢調整済みのスコアとして算出されたSCR (standardized claim-data ratio) データのうち、薬剤についてデータの整理、分布や相関性の確認を実施した。まず、地域の3区分(都道府県、二次医療圏、市区町村)、薬効分類の3区分(薬価基準収載医薬品コード左から3桁、4桁、7桁(7桁が一般名に相当))を比較検討し、二次医療圏別薬効分類4桁のSCRデータを使用することにした。次に、薬効分類間の相関性を確認したところ、相関係数が0.8以上となる組み合わせ、つまり処方量間に関係性がある薬効分類が確認された。結核治療のように併用投与が原則である組み合わせ以外の組み合わせもあり、薬効分類別の処方量に影響する要因の関与が考えられた。そこで、主成分分析を行い、二次医療圏ごと、薬効分類ごとの処方量を新たな成分にまとめ直すことで、それら処方量の特徴を検討した。また、二次医療圏ごとの背景や医療費、医療資源等の情報(人口、可住地面積、診療所数、病床数など)をe-Stat等より得て整理し相関性を確認したところ、二次医療圏ごとの処方量の特徴(主成分)と相関係数(の絶対値)が0.5を超える情報が確認された。それらが処方量に影響している要因である可能性があり、引き続き検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(2022年度)は、使用データの整理、基礎統計量の算出、相関性の確認を計画していた。計画に沿って、使用するSCRデータや公的統計データについて整理し、分布や相関性等の確認を行った。また、2023年度の実施計画である多変量解析や教師無し機械学習による特徴量の抽出については、2022年度に主成分分析を用いた解析として一部前倒しで実施した。一方、成果の公表については2022年度中の学会発表を計画していたが、実際には2023年度(2023年6月)に学会発表予定となり、若干遅れている。計画を前倒して実施した部分と遅れている部分があったため、トータルとして「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調な進展であるため、当初計画通り、多変量解析等により地域の薬剤処方量についての特徴量を得て、地域の差異を検討する。2022年度に先行して行った解析の結果で確認された関係性について、因果関係の方向性も踏まえて因子分析による解析、スコアや負荷量の検討も行い、既報論文の結果などとの合致についても確認する。因子軸の回転も行い、負荷量の観点からの検討も行う。また、地域の医療費や背景情報、医療資源、診療行為等の情報について地域差の有無を確認し、それら情報と因子(または主成分)スコアを照らし合わせて相関性等を検討し、また因子(または主成分)の負荷量(係数行列)の解釈を行い、地域の処方量に影響する要因や処方量が影響する情報について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理用のPCの購入と学会参加を見送ったため差額が生じた。 データ解析のためのソフトウェアの更新費用を計上していたが、昨今の円安に伴う価格改定があり、計画時よりも更新費用が上がった(2023年度5月時点で約25%の上昇)。その上昇分の補填に使用する。
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