研究課題/領域番号 |
22K10496
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
角谷 学 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90755109)
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研究分担者 |
古江 秀昌 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20304884)
西海 信 神戸女学院大学, 人間科学部, 准教授 (20514706)
崔 翼龍 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (60312229)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 睡眠の質 / 代謝 / 摂食ホルモン / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
睡眠障害モデルにおける摂食ホルモンの動態を検討した。その結果、血中レプチン濃度は有意に複合睡眠障害モデルで上昇し、白色脂肪組織における発現量も1日を通して常に増加していた。またグレリンの活性化に必須の脂肪酸であるオクタン酸の血中濃度は複合睡眠障害モデルでは増加し、胃におけるグレリン脂肪酸転移酵素は有意に低下(p=0.03)し、血中の活性型グレリン濃度は低下傾向であった。 一方、エネルギー代謝の観点から褐色脂肪組織の活性を反映するUCP-1 mRNAの発現量の違いを検討した。その結果、複合睡眠障害モデルでは短時間睡眠モデルに比べ有意に低下しており、この現象は特に活動時間帯である夜間に顕著であった。これらの結果から、睡眠の質の低下は特に褐色脂肪組織におけるエネルギー代謝障害と関連すると考えられた。この関係の機序として、褐色脂肪組織における交感神経支配域を反映するtyrosine hydroxylaseの発現量を検討したところ、複合睡眠障害障害モデルではUCP-1と同様に有意に低下していた)。しかし、背内側核における神経細胞のc-fos発現は複合睡眠障害モデルで増強しており、交感神経などに関連する可能性がある視床下部の神経活動の活性化はむしろ亢進していると予想された。以上の結果から、同程度の睡眠欠乏でも睡眠の質低下は、全身の交感神経系の活性化が惹起されているにもかかわらず、褐色脂肪組織においてその作用が低下し、エネルギー代謝が障害される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
睡眠の質と時間の違いが、摂食ホルモン動態や褐色脂肪組織におけるエネルギー産生において差が生じる可能性が見出され、睡眠の「質」の低下が代謝機能へ直接影響する可能性が想定される結果を得ているため
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に対し、自律神経機能の関与の程度を検討するとともに、褐色脂肪組織にエネルギー産生の経路に関与する中枢神経におけるcfos発現を検討し、標的部位を詳細に検証する
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は採取した血液サンプルや臓器での解析を実施したため、新規の機材などの購入はなく、予算の使用額は当初の見積もりよりも低くなった。次年度に関しては、実験遂行において必要な試薬・消耗品等の購入のために使用を予定している。
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