研究課題/領域番号 |
22K10498
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
清水 少一 産業医科大学, 医学部, 講師 (10892804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マラリア / 関節炎 / 気管支喘息 / 衛生仮説 |
研究実績の概要 |
本研究ではネズミマラリア原虫Plasmodium yoelii 17X(Py)の免疫疾患モデルへの影響を調べることで、衛生仮説におけるマラリアの役割を解明することを目指す。自己免疫疾患モデルとしてコラーゲン誘導関節炎(CIA)、アレルギー疾患モデルとして卵白アルブミン誘発気道炎症(OVA)を用いている。
CIAモデルマウスにPyを感染させたところ、コラーゲン免疫後4週後に感染させた群(CIA発症時期にPyが血中に存在する)でCIA抑制効果を示し、CIA促進性の炎症サイトカインの抑制とともにIL-10の増加が観察された。Pyによる関節炎抑制へのIL-10の必要性を検討するため、IL-10ノックアウト(KO)マウスを用いて同様の実験を行った。意外なことに、KOマウスにおいてもPy感染群でCIAの発症が有意に遅れており、しかもこの効果はPyが排除された後に消失した。したがって、PyによるCIA発症抑制には、少なくともIL-10だけではなく他の因子も関与していることが示された。
OVAモデルマウスにPyを感染させたところ、病理組織で粘液産生に係わる杯細胞の減少が認められたことからPyは気道炎症の抑制作用も持つことが示唆された。血清IgEは有意な差はみられなかったものの、肺胞洗浄液中の肺胞マクロファージ数およびIL-5の低下が観察された。肺胞マクロファージ(AM)には炎症抑制効果が報告されていることからPy感染によってAMが増加し気道炎症が抑制されたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部の計画は遅延や変更があるものの、両動物モデルを並行して実験を進めているため、概ね順調と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初はIL-10の役割に着目してその必要性を追求することを計画していたが、前述の通り、Pyによる免疫疾患抑制効果にIL-10以外の関与が考えられるため、まずは宿主動物でどのような免疫学的、病理学的変化が生じているのかそれぞれの疾患モデルにおいて解析することに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はより少ない実験動物での評価系の確立を目指すパイロット研究や研究に関連した学会などでの情報収集に時間を割いたため、実験動物や試薬の量が少なく済んだため若干の差額が生じた。 次年度においては、規模を拡大して研究を進め、解析にも資源を投入する計画である。
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