研究課題/領域番号 |
22K10502
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
藤原 拓也 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 研究員 (70783819)
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研究分担者 |
福井 直樹 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (90516717)
高取 聡 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 課長 (90311480)
古田 雅一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (40181458)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 食品照射 / LC-MS/MS / 損傷ヌクレオシド / 検疫 / 芽止め |
研究実績の概要 |
本研究は、放射線照射により食品中の DNA から生成する特異的な損傷ヌクレオシドである 5,6-Dihydrothymidine (DHdThd) を指標として、芽止めおよび植物検疫の目的で農産物に照射される比較的低い線量(1kGy以下)の照射履歴検知方法を開発することが目標である。我々が開発した本検知法は、食品中の普遍的な成分であるDNAを利用した方法であることから、食品の種類毎に方法を使い分けることなく、様々な食品へ適用することが見込まれる。その一方で、照射線量が低くなるほど生成するDHdThdの量も少なくなるため、本法を数十~数百Gyレベルの検知に応用するには、食品DNA中の極めて微量のDHdThdを検出できるよう、手法を改良する必要がある。そこで、本法による検知に用いるDNAの量を大幅に増やし、さらに固相精製カートリッジによる精製および濃縮を組み合わせることにより、数十Gyレベルの照射履歴を検知できる手順を開発した。実際に芽止めのための照射を想定し、ガンマ線60~150Gyを照射したタマネギから、線量依存的にDHdThdを検出することができた。今後、1kGy以下の放射線を照射した農産物に対する本法の適用性をより確かなものにするため、タマネギ以外の農産物における適用性の検討をさらに進めるとともに、保管中の生体内でのDHdThdの動態解明等を実施することで、将来的な本法の実用化に向けた取り組みを推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多量のDNAを固相精製カートリッジにより精製・濃縮する手順を開発し、濃縮液中におけるヌクレオシド類濃度の負荷量依存性が確認された。ガンマ線60~150Gyを照射したタマネギから、線量依存的にDHdThdを検出し、農産物に対しても本法の適用が見込まれる根拠が得られた。その他の農産物への適用に関しては、今後の検討課題である。特に馬鈴薯からの多量のDNA抽出方法の開発については、糖類等の夾雑成分との分離が難しく、収量が低いため難航している。一方で熱帯果実類の果皮から比較的高い収量のDNAが得られたため、成熟遅延等のための照射履歴の適用を念頭に検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
比較的低い線量(1kGy以下)の食品照射履歴検知法の開発に向けた各種検討を更に進める。タマネギ以外の鱗茎、例えばニンニクなどについても本法の適用性を検討する。また、本法の頑健性を確かめるため、長期保管品からの検知および水培養による加速発芽試験等を実施し、DHdThdの照射後の生体内動態を解明する。また、熱帯果実および馬鈴薯から多量にDNAを抽出できる方法を開発し、本法の適用範囲をさらに広げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金の使用目的として、本研究では、研究に要する消耗品および酵素等の試薬の比重が比較的高い。これらは、補助期間開始時点で、過去の研究によりある程度の在庫を保有している。また、研究代表者らの勤務する研究所は、令和4年12月頃に施設移転を実施したため、研究に割くことができるエフォートが一時的に低下することおよび物品の納品を移転後を主にした方が合理的であるという事情があった。そのため、令和4年度は在庫を優先的に消費し、令和5年度以降に在庫を回復させる形でその分発注することとしたため、次年度使用額が生じた。
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