研究課題/領域番号 |
22K10504
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大森 康孝 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 准教授 (70637602)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 空間線量率 / 積雪水分量 / 原子力事故 / 放射性核種 |
研究実績の概要 |
福島原発事故で放出された人工放射性物質による外部被ばく線量の評価、または将来起こるかもしれない原子力事故による外部被ばく線量の評価で重要な検討項目の1つとなるのが、環境中の放射線量の変動に対する積雪の影響である。原子力事故由来の人工放射性物質および土壌に含まれる天然放射性物質に着目し、放射線測定に基づき積雪中の水分量を評価する方法を開発するとともに、それぞれの物質に対する積雪による遮蔽のメカニズムを明らかにして積雪による放射線量低下をモデル化することが、本課題の最終目標である。 天然の放射性物質について積雪が空間線量率へ与える影響を理解すべく、今年度は両者の傾向を大まかに把握し、数値シミュレーションへ活用するためのデータを取得した。所属機関構内において、ガンマ線の波高分布を測定するとともに、積雪時は単位面積当たりの積雪の重量(積雪水分量;単位:g/cm2)を測定した。測定したガンマ線波高分布をアンフォールディングしてスペクトルへ変換し、空間線量率を構成するウラン系列元素、トリウム系列元素、および放射性カリウムそれぞれの空間線量率を評価した。 積雪による空間線量率の影響について、全空間線量率、並びにトリウム系列元素、および放射性カリウムに起因する空間線量率は、積雪水分量に対して指数関数的に減少した。他方、ウラン系列元素の空間線量率は、積雪水分量に対して指数関数的に減少した後、積雪水分量がある値を超えると一定の値に収束した。すなわち、空間線量率を構成する元素に依存して、積雪の影響が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積雪による空間線量率の減少の傾向を把握することができる程度に実測データを取得することができ、次年度に数値シミュレーションを実施する見通しが立ったことから上記の判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
大地放射線を構成する元素に依存して、積雪に対する空間線量率の減少傾向が異なることが明らかとなった。今後は、数値シミュレーションを用いて積雪による放射線遮蔽効果、および遮蔽効果の元素依存性に関する物理的メカニズムを調べる。また、天然放射性物質と同様に人工放射性物質の積雪による影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が7万円程度と少額であったため次年度へ繰り越すこととした。繰越金は、次年度において消耗品等の購入や文献複写に使用する予定である。
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