研究課題
睡眠障害および糖尿病は、糖尿病血管合併症の発症リスクとなる共通の病態基盤をもち、相互に関与することで、これらの発症・進展リスクを高める可能性があるが、その相互関連についてはあまり知られていない。本研究課題は、糖尿病患者における心血管疾患発症予防の観点から、血糖変動を含む糖代謝の評価に加えて、睡眠障害を客観的かつ定量的に評価し、心血管障害との相互関連について明らかにするものである。本研究課題では所属講座で展開しているコホート研究(HDHCC研究)を基盤とし、検討を進めている。HDHCC研究については、登録者数500名と登録症例数を増やしており、糖尿病合併症や臨床背景についても調査を行っている。さらに、430名が持続グルコースモニターからグルコースデータを得られており、255名においてアクティグラフによる睡眠の量・質の評価が実施できている。2022年度については、2型糖尿病患者の持続グルコースモニターから算出した血糖管理指標を中心に検討を進めた。そして、持続グルコースモニター由来の血糖管理指標と腕-足首脈波伝播速度、大脳白質病変の重症度、尿中アルブミン排泄率がそれぞれ関連することを明らかにし、関連学会で発表を行っている。また、糖尿病患者における炭水化物摂取比率と血糖管理指標および糖尿病合併症との関連について学会誌で報告している。現時点においても、本研究課題について明らかにするために症例登録、および追跡調査を続けている。
2: おおむね順調に進展している
HDHCCコホート研究は2023年3月末時点で、登録者数500名と登録症例数を増やしており、そのうち、430名の症例において持続グルコースモニターからグルコースデータを得られており、255名の症例においてアクティグラフによる睡眠の量・質の評価ができている。そして、糖尿病患者における、持続グルコースモニターから得られた血糖管理指標と脳小血管病の一つである大脳白質病変との関連、動脈硬化性病変の指標である上腕-足首脈波伝播速度との関連、糖尿病腎症との関連などについて明らかにし、日本糖尿病学会および関連学会で学会発表を行ってきた。また、糖尿病患者におけるCOVID-19による睡眠障害への影響や血糖管理への影響について明らかにし、学会発表を行った。そのほかにも、糖尿病患者の持続グルコースモニターから得られた血糖管理指標の実態調査や、糖尿病合併症との関連について学会報告を行った。さらに、HDHCCコホートからのデータを基盤として、糖尿病患者のエネルギー産生栄養素比率が糖尿病患者の血糖管理や糖尿病合併症に与える影響について調査を行い、学術誌に採択された(Osugi K, Kusunoki Y, et al. J Diabetes Investig 2023; 14: 659-668)。以上からも本研究は順調に進展していると考えられる。
HDHCC研究は2018年5月から登録を開始しているが、現時点においても症例の登録のみならず、追跡調査も続けている。現時点までにおいて、血糖管理と糖尿病血管合併症との関連、睡眠障害と血糖管理との関連について横断的な調査を行ってきたが、相互関連について縦断的な解析が進められるようデータの収集および解析を進めていく。また、2022年度に学会報告を行ってきた血糖管理指標と糖尿病腎症および脳小血管病との関連についても論文投稿を進めていく予定である。
持続グルコースモニターで使用する消耗品の費用を当該年度末までに請求できておらず、次年度に繰り越し、使用する予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: 14 ページ: 659-668
10.1111/jdi.13999
Journal of the American Heart Association
巻: 11 ページ: e024948
10.1161/jaha.121.024948
糖尿病と妊娠
巻: 22 ページ: S86-87