研究課題
本研究の目的は、新しい平均血糖指標(adjusted HbA1c,aA1c)を作成し、aA1cが日本人1型糖尿病患者の細小血管・大血管合併症、低血糖の予測指標としてヘモグロビンA1c(HbA1c)より優れていることを明らかにすることである。HbA1cは、糖尿病患者さんの合併症予防の目安だが、同じHbA1c値でも合併症の起こり易さと低血糖の多さには差がある。この個人差を反映した指標が、HbA1cともう一つの血糖管理指標であるグリコアルブミンとの比(GA/HbA1c比)である。HbA1cと患者さん毎固有の値であるGA/HbA1c比とから個人差の要素を取り入れた新しい平均血糖指標(aA1c)を作成した。糖化の個別性を反映したaA1cを規定することは、短期的には低血糖リスク、中長期的には血管合併症リスクと関連すると想定され、臨床現場で有用と考える。小児インスリン治療研究会患者コホートのデータの固定データを用い、既報のヘモグロビン糖化度の3つの指標、血清蛋白とHbA1cを同時測定した特定集団でのみ求められるglycation gap、持続血糖測定データより求められるHemoglobin Glycation Indexと、GA/HbA1cとの関連よりaA1cを推定し、第56回日本小児内分泌学会学術集会、第67回日本糖尿病学会年次学術集会で「HbA1cとGAから求められ、個人のヘモグロビン糖化度を反映した簡便に求められる血糖管理指標としてaA1cを提案した。その推定式は、aA1c=0.71*HbA1c+1.96*GA/HbA1c-3.46である。」ことを報告し、論文作成中である。aA1cは修正済み個人別推定HbA1c値であり、個人のヘモグロビンの糖化度を考慮せずに、過去のエビデンスに基づき低血糖や高血糖にともなう合併症リスクを推定することが可能になる指標と利用可能と考えている。
4: 遅れている
新型コロナ感染症流行期、新型コロナウイルス感染症患者への対応と各医療機関の感染対策基準により、小児インスリン治療研究会の会員のデータクリーニング作業部会が開催できなかった。本研究で検討予定であった小児インスリン治療研究会の第5コホートの登録症例のデータクリーニングが遅れ、未だ固定データセットの提供がなされていない。そのため、当初検討予定であった登録症例を長期連結した検討を行うことができていない。
小児インスリン治療研究会患者コホートの固定済みのデータを用いた検討を進め、現在執筆中の論文のpunrishを果たす。小児インスリン治療研究会患者コホートのデータクリーニングを、外れ値を用いてより簡便・的確にクリーニングを行っていく。
次年度使用が生じた理由は、固定されたデータセットの提供の遅れにより計画通りの検討ができなかったため、また、新型コロナウイルス感染症への対策として国際学会への参加を見送らざるを得なかったためである。次年度は、入手可能なデータでの検討と提供予定の固定データでの検討を進め、論文発表し、その掲載費用等に使用する予定である。
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