研究課題/領域番号 |
22K10559
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
加茂 憲一 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (10404740)
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研究分担者 |
福井 敬祐 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (50760922)
坂本 亘 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (70304029)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロシミュレーション / 大腸がん / リスク評価 / 数理モデル / 介入効果 |
研究実績の概要 |
大腸がんに関するマイクロシミュレーションについて、特に数理面の改良およびシミュレーションシステムの洗練が本研究の目的である。数理面に関しては3つのテーマ「①複数の腺腫発生・除去モデル」「②腺腫の成長モデル」「③Sojourn time」を掲げている。①については本年度の進捗は無かったが、②については消化器がん検診データを用いた、腺腫成長に関する成長曲線モデルの構築を行った。データに不安定性が高いため、高次元パラメータの関数でなく、2パラメータのBetrallanfyを採用し、検診受診時に発見された腺腫と腫瘍に対するフィッティングを行った。その結果、階層的な年齢依存性が観察された。具体的には若年における不安定性が顕著である一方で、高齢になるに従って発見時の腺腫サイズが大きくなるというモデルおよびパラメータが推定され、これは現実のデータを再現するものであった。一方で、腺腫発生時点が特定できない、観測時点数が少なく特に高次元成長関数による推定が安定しないといった問題点も浮き彫りになった。今後はこれらの改良に取り組みつつ、成長関数の選択問題に取り組む予定である。③については、現在海外のモデルおよびパラメータを組み込んでいる点に着目し、日本オリジナルのモデルを作成すべく文献調査を行った。その結果、畳み込みを用いたモデリングが有用であろうとの結論を得、次年度以降はその方針でモデルを構築する予定である。 シミュレーションの修正に関しては、現在R-studioで構成しているプログラムについてマクロ化を進めており、プロセス毎の独立性の高いシステムを構築中である。このことにより、プロセス毎のチューニングが容易なユーザーフレンドリーなシミュレーションシステムが完成しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大きく3つのテーマ「①複数の腺腫発生・除去モデル」、「②腺腫の成長モデル」、「③Sojourn time」が研究内容の柱である。①について、腺腫に関してはゼロ過剰ポアソンモデルを適用するための準備を行い、モデルの概要は完成している。②については、がん検診において収集された、腺腫や腫瘍の発生状況に関するサーベイデータを用いて腺腫成長モデルの構築およびパラメータの推定を試み、成長に年齢依存性が存在することが確認できた。①と②の理論的な側面に関しては概ね予定通りの進捗状況である。③については、文献調査を行い、畳み込み理論に基づいたSojourn time推定を行う方針が立てられた。しかし具体的なモデルの構築や、実データの収集については未だであり、当初の予定よりはやや遅れている。 一方でシミュレーションシステムの構築に関しては、ベースラインとなるシステムのマクロ化に取り組んでいる。特に本研究で取り組むべき上記3つの箇所についてはマクロ化が急がれる所であるが、全体との整合性を図る作業に時間を有しており、やや遅れている状況である。シミュレーションシステムは分担研究者も共通に利用しているプログラム言語を用いているが、コロナ禍の影響で対面での作業を殆ど行えなかった。個々に改良したプログラムを持ち寄る作業には、擦り合わせに多大な注意が必要であるが、その問題点を避けるためにコロナ禍以前には対面での共同作業を行ってきたが、2022年度は班会議こそ対面で行えたもののプログラミング作業に費やせる時間は少なかった。この事も、プログラミングに関する進捗がやや遅れている原因である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針であるが、数理面に関しては「①複数の腺腫発生・除去モデル」、「②腺腫の成長モデル」、「③Sojourn time」の3つについて引き続き検討と行う予定である。①については、モデルの概要の数値実験による妥当性評価と、実データへの適合チェックが課題となる。一方で内視鏡による複数除去に関しては、再発との兼ね合いを考慮したプログラミングに取り組む予定である。可能であれば、腺腫の発生しやすさに基づいた介入に関するシナリオを用いた介入効果の検証にも取り組む予定である。②については、現在の成長モデルにおける問題点である「腺腫発生時点(ゼロ時点)の特定」「観測時点数の少なさを解消するベイズ型アプローチ」「高次元成長関数における推定の安定化」「成長関数の選択問題」「成長のクラスタリング」といった問題に取り組む予定である。改良した内容については、順次シミュレーションシステムに反映することによるシステム改良に反映させる予定である。③については、畳み込みモデルを用いるためのデータ準備および数値実験による妥当性の検証を引き続き行う予定である。 シミュレーションシステムに関しては、自然史のコンパートメントに基づいたマクロ化を引き続き推進し、マイナーチェンジやチューニングが独立した形で行える汎用性の高いシステム構築を目指す。また、上記の数理面における改良についても順次組み込んで、データ解析を通した検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、対面でのプログラミング作業工程の回数が制限されたため。
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