研究課題/領域番号 |
22K10565
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
中野 真規子 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 化学物質情報管理研究センター疫学研究部, 部長 (70384906)
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研究分担者 |
武林 亨 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30265780)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 芳香族アミン / バイオモニタリング / 環境曝露 / 尿中芳香族アミン / オルト-トルイジン |
研究実績の概要 |
2015年12月、オルト-トルイジンを含む芳香族アミン等を原料とし、染料の中間体を製造する40人規模の工場で、退職者を含む男性作業者5人の膀胱がん集団発生事例があった当該事業所で2017年1月から疫学調査を開始した。2023年度の追跡調査は、諸事情で実施できなかった。芳香族アミンは、吸入や経口曝露の他に経皮吸収もされ、国際がん研究機関(IARC)によりアニリンはグループ2A, オルト-アニシジンはグループ 2Aと評価されている。しかし、食事、タバコなどの一般環境からの曝露もあり、非職業性曝露によるバックグラウンド値を検討する必要がある。今年度は、芳香族アミンの取り扱いのない事業所の作業者25名に、芳香族アミン(オルト-トルイジン、アニリン、2,4-ジメチルアニリン、オルト-アニシジン)の尿中のバイオモニタリングの実施をした。尿中の抱合体を酵素(β-グルクロニダーゼ/アリルサルファターゼ)で加水分解した後、上記4物質(親化合物)、及びそれらの代謝物24物質を液体クロマトグラフー質量分析計にて測定した。その結果、親化合物4物質は全検体から検出されず、9つの代謝物のみが4-100%の割合で出現した。非曝露者全体の中で、出現割合が高かった(>95%)4つの代謝物の尿中濃度は、広く分布していた(2-アミノフェノール, 44-2098 ng/mL; 2’-ヒドロキシアセトアニリド, <5-1026 ng/mL; 4’-ヒドロキシアセトアニリド, 6-1711 ng/mL; アントラニル酸, 114-890 ng/mL)。物質によっては、生理的排泄は無視できる濃度ではなく、また個人差があり、代謝物を含めてバイオモニタリングを行う場合は、それらの点への考慮が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膀胱がん集団発生の当該事業所での追跡は、諸事情により2022年4月の調査で追跡終了となった。しかし、職業性曝露者に対する曝露のベースラインとなる、非職業性曝露者の芳香族アミンおよびその代謝物の尿中濃度の検討を行えるフィールドを開拓したため
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今後の研究の推進方策 |
疫学調査としては、膀胱がん集団発生の当該事業所での追跡は、2022年4月の調査で終了したが、これまでの追跡調査による自記式健康調査票の血尿、残尿感等の泌尿器自覚症状の有所見率の推移を明らかにし、尿潜血、尿細胞診、NMP-22との関連を検討していく。 また、2020年に、国際がん研究機関(IARC)は、複数の芳香族アミンの発がん性分類(アニリン; グループ 3から2A, オルト-アニシジン; グループ 2Bから2A)を見直している注目すべき化学物質である。芳香族アミンは、食事、タバコなどの一般環境からの曝露もあるため、研究協力者と芳香族アミンへの職業性非曝露者の尿中のバイオモニタリングの検討を進め、曝露者のベースライン値の検討をさらに進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用計画と多少異なるが、おおむね順調に使用できている。
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