研究実績の概要 |
飲酒はがんのリスクとされているが、「飲酒と胃がん」の知見は一致しておらず、また飲酒習慣を規定する遺伝要因(アルコール感受性遺伝要因)を考慮して本関連を評価したコホート研究のエビデンスはほとんどない。アルコール感受性遺伝要因は日本人を含む東アジア人に広く分布し、東アジア人での飲酒による発がんリスクを高める可能性がある一方で、飲酒習慣や飲酒量そのものを抑制して発がんリスクを間接的に弱める効果も示唆されており、飲酒量評価に優れたコホート研究による本関連の解明が期待されている。そこで本研究では、大規模ゲノムコホート研究のデータを用いて、アルコール感受性遺伝要因を考慮したうえで飲酒と胃がんとの関連を評価し、本関連におけるメカニズムや遺伝要因の役割を提示する。
研究対象者は日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study)の参加者(35-69歳の男女、健常人)で、がん罹患追跡調査を実施している約78,000名である。
本年度はゲノムデータを有する対象者約14,500名について、アルコール感受性遺伝要因であるaldehyde dehydrogenase 2(ALDH2, rs671)、alcohol dehydrogenase 1B(ADH1B, rs1229984)、alcohol dehydrogenase 1C(ADH1C, rs698)の3遺伝子多型データを抽出した。また一部の対象者において、血清ピロリ菌抗体価および血清ぺプシノーゲンI/Ⅱ値の測定を開始した。研究対象者のアルコール感受性遺伝要因、ピロリ菌の感染状況、慢性萎縮性胃炎の有無を考慮したうえで、性・年齢をマッチさせたコホート内症例対照研究が実施できるように研究を進めている。
|