研究実績の概要 |
本研究の主要評価項目の一つとして認知機能障害及び認知症がある。認知機能低下は、確立された自己管理タスクを完了することが困難な場合が多いとされている。今回の研究では、指示があった家庭血圧測定が十分に達成できない場合、認知機能低下と関連があるかもしれないという仮説を立てた。303名(平均年齢 77.3±8.2歳、男性66.7%)を対象に、24時間自由行動下血圧計(ABPM)と家庭血圧測定機能を合わせもつ血圧測定機器を用いて、ABPMを施行後に7日間の家庭血圧測定をお願いした。認知機能の評価として、MoCA-Jを用いた。平均MoCA-Jスコアは、18.5±6.0点であった。家庭血圧測定日数が5日未満の群(n=55)では、家庭血圧測定日数とMoCA-Jスコアに相関を認めたが(r=0.56, P<0.001)、5日以上の群(n=248)ではその関係を認めなかった(r=-0.06, P=0.312)。全体集団において、心血管リスク因子を共変量に含めた重回帰分析では、家庭血圧測定日数(β=0.62; 95%信頼区間[CI], 0.19, 1.05)及び家庭血圧測定日数5日未満(β=-1.69; 95%CI, -3.26, -0.12)は、MoCA-Jスコアと関連を認めた。MoCA-Jスコアの最下位4分位目(13点以下)を低MoCA-J群としてロジスティック回帰分析を行うと、家庭血圧測定日数が増加するほど低MoCA-J群となるリスクは約30%低下し(オッズ比, 0.72; 95%CI, 0.58-0.39)、家庭血圧測定日数5日未満は、低MoCA-J群となるリスクは約3倍となった(オッズ比, 2.92; 95%CI 1.37-6.23)。高齢者において、家庭血圧測定を一定期間行うように指示した場合、家庭血圧モニタリングの不十分な遵守は認知機能障害と関連している可能性がある。
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