研究課題/領域番号 |
22K10599
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
的場 光太郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (00466450)
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研究分担者 |
神 繁樹 北海道大学, 医学研究院, 講師 (60531845)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 法昆虫中毒学 / 腐敗死体 / LC-MS / PESI-MS |
研究実績の概要 |
当初計画では本研究の初年度に根幹となる薬毒物の分析条件の確立であり、2年目となる本年度はそれらを用いてモデル実験を行うことであった。少し研究計画を変更し、腐敗した事例において採取した蛆や蛹などの固体検体について、(1)破砕して溶媒抽出した後に高速液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)によって分析する方法と(2)探針エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(PESI-MS)による直接分析法を行い、その差異を調査することを優先した。(1)の破砕して溶媒抽出する前処理法は肝臓検体に対する前処理法として既に報告のあった方法(臼井ら,2014)を用いた。即ち、蛆等の固体検体を0.5 g取り、1.5 mLの超純水と1 mLの内部標準物質が含まれたアセトニトリル、さらにQuEChERS法キットの粉類0.5 g、4 mmのステンレスビーズを5 mL遠心チューブに入れビーズクラッシャーの装置を用いて破砕操作を行った。破砕後、遠心分離により有機溶媒層(上層)と水層(下層)に分離し、続いて有機溶媒層をdispersive-SPEキットを用いて精製して得られたサンプルをLC-MS(ESI-LC-MS/MS)で分析した。(2)の直接分析は検体を1 mm角ほどに切り出して専用サンプルホルダーにセットした後にギ酸およびギ酸アンモニウムを含む50%エタノール水溶液を加えてPESI-MSで分析した。 数事例において分析を行ったが、(1)破砕・抽出分析法および(2)直接分析法で同等の薬物の検出を認めた。但し、前処理法の違いで検出濃度に差異が見られ、今後は調整や補正が必要になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標である腐敗した死体に付着する蛆などの昆虫から検出可能な薬毒物の種別の同定や薬毒物濃度の解釈における新たな指標の確立には迅速で的確な分析法の開発が必要であるが、PESI-MSによる直接分析法は現在最適な方法と考えており、その評価は重要である。そのことを踏まえると、当初計画から少し変更になったものの本年度の成果は本研究にとって十分なものであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては当初の予定通り、動物の臓器を用いて模擬的な昆虫(蛆・蛹など)検体を作製し、臓器中の薬物濃度と昆虫で検出される薬物との関係を調査する。例えば市販の食肉用ブタ肝臓を日本国内で処方数が多いとされる向精神薬やベンゾジアゼピン系薬物など溶液に浸し、ハエの蛆に蚕食させる。臓器を浸す薬物溶液は濃度を数種類用意、また薬物を混合するなど様々な条件について臓器の含有濃度とハエの蛆で検出される濃度との関係を調査し評価を行う。
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