研究課題
本研究は事故による子どもの頭部外傷を予防するため,また法医鑑定において子どもの頭部外傷を正確に評価できるようにするために,①子どもの頭蓋骨の強度及び厚さを部位毎に評価し,比較することで,どの部位が骨折しやすいのかを明らかにすること,②年齢との相関関係を調査し,頭蓋骨の生理的成長について明らかにすること,③男女別に分けて調査し,子どもの頭蓋骨の性差について明らかにすることを目的とした。法医解剖が行われた事例のうち,性別・年齢等が明らかである20歳未満の日本人死体42例(男性23体,女性19体)から合計170個の試料が得られた。3点曲げ試験装置を用いて曲げ荷重及び変位を求め,さらに曲げひずみと曲げ応力のグラフを作成し,ヤング率,降伏応力,最大応力を求めた。1.5歳以下の23例では,男性46個中14個,女性40個中20個が3点曲げ試験で破断しなかった。このような現象を明らかにした報告は今回が初めてであった。我々の過去の研究では成人の頭蓋骨の強度は男性のほうが女性よりも有意に大きいことを示したが,本研究の結果,子どもでは異なることが示された。本研究は子どもの頭蓋骨の厚さと3つの力学的特性(ヤング率,降伏応力,最大応力)がいずれも年齢と共に対数的に増加することを示した初めての研究となった。また,子どもの頭蓋骨は就学前で特に薄く,強度が小さく,小さな外力でも骨折する危険性が高いことが示唆された。本研究の成果をまとめ,2022年に論文を執筆し,国際誌であるForensic Science Internationalに投稿し,2023年1月に受理された。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の成果をまとめた論文はすでに国際誌(査読あり)に受理されているため。
現在,本研究の次なる研究として,別の計算方法を用いた子どもの頭蓋骨強度の研究を行うために,新たに試料を収集しているところである。
使用額の端数が使い切れず,翌年度に翌年度分とともに使い切る予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Forensic Science International
巻: 344 ページ: 111580~111580
10.1016/j.forsciint.2023.111580