研究課題/領域番号 |
22K10610
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
浅野 水辺 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90283879)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 薬物中毒 / ホルマリン / エタノール / 臓器 |
研究実績の概要 |
法医鑑定において鑑定対象の飲酒の有無は重要である。解剖時に血液が採取保存されていなかった場合や、事後に再鑑定が必要になった場合を想定し、ホルマリン固定臓器を試料として、アルコール(エタノール)摂取の有無やその程度を判別できるかを明らかにすることが本研究の目的である。 ホルマリン固定臓器からエタノールを検出できることが明らかとなったので、昨年度に引き続き、症例を追加且つ、観察期間を延長して、ホルマリン浸漬期間とホルマリン固定臓器中エタノール濃度や死亡時エタノール濃度の関係を検討した。飲酒が明らかな解剖症例(死後血中エタノール濃度平均2.4mg/mL)から得た肝臓、腎臓、肺臓、脳を最長15ヶ月間ホルマリン固定し、経時的に臓器及び浸漬ホルマリン中のエタノールをヘッドスペースGC法で定量し、下記の結果が得られた。 未固定の臓器中エタノール濃度と比較し、ホルマリン固定臓器では浸漬直後にエタノール濃度は減少し、その後はほぼ一定であった。臓器重量の約10倍量のホルマリンに浸漬した場合、臓器中エタノール濃度の未固定臓器比は肝臓6.2%、腎臓5.9%、脳8.0%でほぼ一定となった。浸漬ホルマリンからは約0.1mg/mLと微量のエタノールが検出された。臓器中エタノール濃度の減少率は、浸漬するホルマリン量が多いほど大きかった。臓器によって減少率に有意な差はなかったが、脳ではやや減少率が小さい傾向にあった。死亡時血中エタノール濃度による減少率の差は認められなかった。 以上の結果から、エタノールはホルマリン浸漬後速やかにホルマリン中に拡散し、その分布は臓器含水量と浸漬ホルマリン量に規定されることが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象症例数を増やし、ホルマリン固定期間を最長で年単位まで伸ばして、臓器中エタノール濃度の経時変化を検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
ホルマリン固定したヒト臓器中の向精神薬濃度の経時変化を検討し、ホルマリン固定臓器で薬物中毒診断が可能な薬物を明らかにする。
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