研究課題/領域番号 |
22K10621
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
島田 亮 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (10376725)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脳損傷 / 髄膜リンパ管 / 頸部深リンパ管 / 深前頸リンパ節 / 髄膜リンパ管機能障害 / 経年脳機能障害 |
研究実績の概要 |
髄膜リンパ管機能の障害は、脳への巨大分子の血管内流入および間質液からの巨大分子の流出を遅らせ、マウスにおいて認知障害を誘発すると報告されている。脳損傷歴のある者は認知症やアルツハイマー病が罹患しやすいと知られている。脳損傷と細胞老化を特徴とする晩年の認知症やアルツハイマー病と直接結びつくのには限界がある。脳損傷がどのように細胞老化させたかのメカニズムはまだはっきりと解っていない。ここで、脳損傷は髄膜リンパ機能に悪影響を与え、晩年の認知症やアルツハイマー病に結びつくと考える。今まで、外傷性脳損傷での髄膜リンパ管内皮細胞の障害と新生が確認され、髄膜リンパ管障害の病態への関与が示唆された。本研究は脳細胞の網羅的な遺伝子発現解析を行い、髄膜リンパ管の障害は脳損傷後認知機能に対しどのように関与しているかについて解析するという目的である。 まず、若年期脳損傷による髄膜リンパ管障害は若年期、中年期及び晩年期においてどのように脳機能に影響がでるのかを解明するために、若年期脳損傷後の各時期経過後のマウスの海馬を網羅的に遺伝子発現解析し、発現が変化する遺伝子を見出す。次に、晩年期髄膜リンパ管が機能障害した場合を想定し、髄膜リンパ管に負荷をかける必要があると考える。晩年期マウスの髄膜リンパ管を閉塞し、その髄膜リンパ管内皮細胞と海馬を用いて解析する。若年期脳損傷後、晩年期まで生存したマウス、晩年期髄膜リンパ管障害後脳損傷マウス及びアルツハイマー病モデルマウスと3者の遺伝子発現を比較し、その相同性を見出せば、その共通遺伝子の制御によって、若年期脳損傷が晩年期の脳細胞老化を促進する原因遺伝子である可能性を見出すとともに早期の脳損傷と晩年期の認知障害を結びつけるか探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス脳損傷後の髄膜リンパ管内皮細胞を分離採取し、mRNAとタンパクを解析した結果、髄膜リンパ管内皮細胞数は損傷群がSham群と比べて有意に減少した。リンパ管内皮細胞に特異的に発現するLYVE1の髄膜リンパ管内皮細胞のmRNA発現量は損傷群がSham群と比べて有意に減少した。一方、リンパ管新生にかかわるFLT4とNRP2の髄膜リンパ管内皮細胞のmRNAとタンパクの発現量は損傷群がSham群と比べて有意に増加した。外傷性脳損傷での髄膜リンパ管内皮細胞の障害と新生が確認され、髄膜リンパ管障害の病態への関与が示唆された。 髄膜リンパ管障害が脳に及ぼす影響を解析するため、マウス脳損傷後1.5年の損傷群とSham群の脳を採取した。髄膜リンパ管を閉塞のため、頸部深リンパ管の結紮方法を選択した。現在、頸部深リンパ管を結紮して、マウスの大槽からトレーサの蛍光標識Ovalbuminを注入し、深前頚リンパ節への到達具合を確認している。頸部深リンパ管を結紮しない群と比較し、結紮による髄膜リンパ管の閉塞効果を評価している。また、頸部深リンパ管結紮によるマウスの認知機能の変化について、水迷路法で評価しているところ。
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今後の研究の推進方策 |
頸部深リンパ管を結紮による髄膜リンパ管の閉塞効果を評価及び頸部深リンパ管結紮によるマウスの認知機能の変化の評価後、1.5年齢マウスの髄膜リンパ管を閉塞し、一定期間を経過後、脳、深前頚リンパ節など採取し、脳損傷後1.5年齢マウスの脳などとともに、RNAseqを用いてmRNA発現解析、免疫染色とWestern blot法を用いてタンパク発現解析
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次年度使用額が生じた理由 |
予想ほど少なく使用できたので、今後不測の事態を備えて、次年度へ回すことができた。
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