研究課題/領域番号 |
22K10624
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
藤浪 良仁 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (30335632)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | MALDI-TOF MS / 法科学 / 病原微生物 / 不純物 / 生活反応 |
研究実績の概要 |
初年度は当研究所で保有する非病原及び病原微生物について純培養されたコロニーに対してMALDI-TOF MSのデータをBruker社のBiotyperシステムにおいて取得した。本システムにおけるリファレンスライブラリーは、バイオテロ用セキュリティーライブラリおよび一般微生物ライブラリーを合わせて1万株を超えるブルカー社のデータベースに加えて、文部科学省のナショナルバイオリソースプロジェクトより1740株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターより613株の無償提供頂いたデータ(MSPデータ)を追加し、合計14354株となった。このデータベースに対し、病原微生物及び非病原微生物の標準株58株のマススペクトルで異同識別を実施した結果、概ね種レベルで一致した。このようにデータベースが巨大化することで、偶然の一致による誤同定の増加が危惧されたが同属近縁種以外には観察されなかった。病原微生物の鑑別対象となる同属近縁種に対して、誤判定をするものもあったが、これらは非病原性の同属近縁種のデータが不足していたためであった。そのため非病原性の同属近縁種を培養し、新鮮コロニーから新たにデータを取得しデータベースへ僅か数株追加するだけで、その鑑別精度は改善され正しく同定されるように改善された。またユーザーで取得したマススペクトルデータをデータベースへ登録する時に、デフォルトで設定されている70ピークで構成されるBioTyperの独自のアルゴリズムにより、各々の微生物の特異ピーク群がピックアップされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度初めに急性心筋梗塞を発症したが緊急カテーテル手術により救命された。その後1週間の入院と1カ月の自宅療養のため、科研費による研究業務だけでなく、それ以外の業務がすべて停止していた。その後も心筋梗塞再発を恐れ少しずつ体力の回復を図りながら、可能な限りではあるが少しずつ研究を遂行している。また発注試薬も納品されないトラブルの発生もあり、思うように研究を実施出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終的にはMALDI-TOF MSを用いた法科学的資料に対応した陳旧化及び不純物を含めた微生物検査の導入を目指す。そのため純培養された微生物だけでなく、微生物資料に不純物が混入しているときの特異的マススペクトルパターンを取得する。最初に微生物へ混入が想定される不純物及び保護剤単独のマススペクトルパターンを取得し、次に微生物に保護剤を添加し剤形を有した状態の生物剤のマススペクトルパターンを取得する。さらに微生物の栄養源として微生物培養用の培地だけでなく、一般流通する食材を使用した時の微生物培養液の代謝産物を含めたマススペクトルパターンも取得し比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究開始当初に急性心筋梗塞発症し緊急カテーテル手術により救命されたが、術後1週間の入院及び1ヵ月間の自宅療養を指示された。その後も心筋梗塞再発しないように少しずつ体力の回復を図っている。そのため、当初の計画のようには実施できていない。また発注された試薬も届かないため、いまある試薬のみで検討を実施している。今後は昨年実施出来なかった分を残りの2年で研究計画に振り分け研究完遂を目指す予定である。
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