研究課題/領域番号 |
22K10674
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研究機関 | 九州看護福祉大学 |
研究代表者 |
古堅 裕章 九州看護福祉大学, 看護福祉学部, 助教 (30636105)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 解剖生理学 / ゲーミフィケーション / インストラクショナルデザイン / 看護教育 / フィジカルアセスメント / 謎解き / 物語 / XR |
研究実績の概要 |
インストラクショナルデザイン(ID)とゲーミフィケーションを用いた学習教材の開発・教育実践・評価を行ってきた。「解剖模型学習教材」では、苦手意識の改善・学習意欲の向上が見られ、自由記述からは、【ゲームによる面白さ】だけでなく、【人体の構造と機能に関する回答】も多くみられ、楽しみながら臨床判断能力の基盤となる解剖生理学の活用方法を体感・実践できていたことが伺われる。 一方で、教育用ゲームには「ゲームっぽいだけでおもしろくない教材」や反対に「おもしろいだけで学習効果に疑問を感じる教材」という失敗事例が多く存在している現状もあるため、学習効果を担保し楽しく学べる教材を設計するために、2022年度までの実施・評価の内容を整理し、謎解き脱出ゲームを教育に導入するためのマニュアル開発へ向けての検討を行い、雑誌および学会での発表を行った。 上記のマニュアル開発の検討で明らかとなったポイントに基づき設計された、「聴診学習用教材」では、新たに「肺音聴診」の開発・実践を行った。学習内容および対象者が異なる今回の実践においても、昨年度の「心音聴診」と同様に楽しみながら興味関心を高め、体験した学習内容を実際の行動に移す意思が確認され、「ノベルゲーム」と「謎解き脱出ゲーム」の併用による学習が、自発的参加や行動変容に対し有効に作用する可能性が示されたのではないかと考えている。 また、COVID-19のようなパンデミックにより遠隔授業が余儀なくされた場合にも解剖模型を用いた立体構造の学習ができるように、解剖模型の3Dモデルの作成と教材開発方法の検討も進めており、VR専用機材を用いたメタバース空間での学習とBYOD(学生のスマートフォン等の機材)を用いた、3Dモデルの単純閲覧やARモードなど、それぞれの長所を使い分けることで「対面でも遠隔でも実施可能な人体解剖模型学習用ゲーム教材」となりうると考えている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、3~4年目に導入予定にしていた「XR(クロスリアリティー)を用いた遠隔講義」への対応を前倒し行っている。3Dモデルの作成は順調に進んでおり、学習教材の提供方法に関しても検討を重ね、VRとWeb ARの併用の方向性で開発を進めている状況ではあるが、まだ実践段階には至っていない。 一方で、「解剖模型学習教材」や「聴診学習教材」の開発・実践は行えており、研究成果をもとに、謎解き脱出ゲームをゲーミフィケーションとして教育に導入する上で注意点など、マニュアルの検討も同時に進められていることから、4年間の研究計画全体としての進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目となる2024年度は、作成した3DモデルをBYODにて単純閲覧やWeb AR形式で提供する事で、同時に学習できる人数の増加を可能とした解剖模型学習の実践・評価を行う。同時に、VRとWeb AR併用による遠隔授業対応のための教材の開発および予備実験を行い、BYODを用いた多人数での解剖模型学習の評価結果をもとに修正し、年度後半には本実験へと進む予定にしている。 また、「聴診学習用ゲーム教材」に関しては、2022年度作成の心音、2023年度作成の肺音を併せて、一連の流れで学習できるゲーム学習教材を作成し実践・評価を行っていくことで、解剖生理学の理解を基にした心音・肺音の聴取およびフィジカルアセスメントを、楽しく主体的に学べる学習教材の開発へとつなげていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主となる部分がゲーム教材の開発であることから、開発に必要な物品費を交付決定額内で確保するために、人件費を削減し物品費に充てる形での調整を行っている。また、eラーニング開発用ソフトおよび周辺機器の予算を初年度に購入する計画としていたが、解剖模型の3Dモデル作成に伴い、必要となるソフト・周辺機器が変更となる可能性を考慮して購入を見送っている。現在、3Dモデルの作成も進み、教材設計の方向性も定まってきているので、次年度にソフトおよび周辺機器の購入に使用する予定である。
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