研究課題/領域番号 |
22K10703
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 ひとみ 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (90183607)
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研究分担者 |
小林 牧子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90629651)
福重 真美 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (80865600)
松本 智晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (80540781)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウエアラブルマイク / コミュニケーション / 飛沫感染予防策 / マスク |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症などの飛沫感染を予防するためにはマスク着用が欠かせない。しかし、マスクを着用すると、声の遮断や、マスク自体が物理的な周波数フィルタとなることから、コミュニケーションが阻害される可能性が高くなる。マスク着用時においても円滑なコミュニケーションを達成するために、ゾルゲルコンポジットによる貼り付け型音響マイクの開発を行った。 圧電式マイクロフォンとは、振動を圧電効果により電気信号に変換するマイクである。本研究ではフレキシブル金属基板上のゾルゲル複合体法によって圧電マイクを開発した。作製した圧電膜は多孔性圧電膜であり、空孔が振動を吸収することでリンギングが抑制されバッキング材が不要になることから、従来の圧電マイクよりもフレキシブルでウェアラブルな圧電マイクを作製することができる。基盤は耐熱性と柔軟性を考慮し、厚さ50μmのSUS304を使用し、膜厚は作製の容易さを考慮し80~100μmとした。上部電極およびグラウンドに接続する配線は同軸ケーブルから取り出し、同軸ケーブルのもう一端は、録音デバイスに直接接続できるミニプラグ端子に接続した。 声帯の長さや発声器官の形状には個人差があるため、不織布マスク用の市販のマスクフレームに圧電マイクをテープで固定し、マスクをした状態で計測を行った。圧電マイクの大きさは12×6 mmと18×4 mmを用いたが、18×4 mmの細長い形状の方が、デバイスをマスクフレームに装着できることから、測定の再現性が高まった。Perceptual Evaluation of Speech Quality (PESQ)を用い、MOS値による音声品質評価を行ったところ、すべての項目で18×4 mmの方が高得点で、音声認識正答率も59.7%から65.7%に向上した。また、主観的な評価では、こもりの減少が確認された。さらに、録音音声に拍手などの外部雑音も入っていなかったことから、外部雑音に強い音響マイクとしての応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マイクの形状を変えたことで、マイクフレームに装着できるようになり、音声評価の再現性が高まった。ピンマイクに比べて音質はやや劣るものの、市販の咽頭マイクよりも認識率に優れており、雑音下で録音しても、雑音が録音音声に含まれていなかったことから、雑音下での補助コミュニケーションツールとしての可能性も示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下に取組む。 〇PZT圧電膜マイクの評価に基づく修正:①ICレコーダーに有線で接続したPZT圧電膜マイクが装填されたマスクを着用した場合、②ICレコーダーに有線で接続したPZT圧電膜マイクを咽喉部分に装着し、マスクを着用した場合、③ICレコーダーに有線で接続した市販の咽喉マイクロを咽喉部分に装着し、マスクを着用した場合、④マスクのみを着用した場合の4パターンの音声解析を行い、高い音声感度を得るためのPZT圧電膜の基板面積を確定する。 ○実証試験:上記の実験で収集した音声データを編集し、被験者に聴いてもらい、VCV音声、国際音声記号別、母音・子音別の正答率と異聴内容を比較し、試作品の実用化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作製したマイクの性能が予想以上によく、開発費用の節約ができた。今年度は①ICレコーダーに有線で接続された試作品をマスクを装着した場合、②ICレコーダーに有線で接続された試作品を咽喉部分に装着し、マスクを着用した場合、③ICレコーダーに有線で接続された市販の咽喉マイクロを咽喉部分に装着し、マスクを着用した場合、④マスクのみを着用した場合の4パターンの音声解析を行い、マイクの性能を評価し、より鮮明なマイクへの改良に取組む。
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