研究課題/領域番号 |
22K10823
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
異儀田 はづき 東京女子医科大学, 看護学部, 助教 (70601293)
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研究分担者 |
古屋 健 立正大学, 心理学部, 教授 (20173552)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 精神科 / 多職種連携 / チームワーク / 精神看護 |
研究実績の概要 |
近年、医療保健福祉における多職種連携の重要性は増しており、異なる学問的背景を持つ専門職の集まりである多様性のある多職種チームでは、互いの専門性を結集させ、患者個別の複雑な問題に対応することが求められている。本研究は、精神科医療における多職種連携の実態を明らかにし、その効果に影響を及ぼす要因を解明し、多職種連携を評価する尺度を開発し、より良い多職種連携を実現するための具体的方法を提言することが目的である。 予備調査として2021年度に精神科看護師精神科医療の多職種連携のチームワーク評価に関する項目を作成し、精神科看護師35名を対象とした面接調査により61ケースを収集し、質問項目を洗練した。 2022年度は、作成した尺度案を用いて、精神科医療を中心とした多職種連携の実態把握とその効果に影響する要因の解明を目的に「精神科医療と精神科以外の診療科における多職種連携のチームワークの比較に関する研究」として、精神科と他科の入院病棟に勤務している看護師549名(回収率81.7%)にアンケート調査を行った。 調査結果では、多職種連携の成果に直接または間接的に影響を及ぼすプロセス要因には目標・計画・役割分担の共有などの「治療過程」、点検評価や適切な意思決定などの「意思決定因子」、多職種チーム内の一体感や信頼関係などの「チームの凝集性」があり、多職種連携のプロセスの問題には「コミュニケーション問題」「カンファレンス問題」「チームの機能不全問題」「多職種チーム外問題」があることが明らかになった。このうち「チームの凝集性」は「意思決定因子」に対し、極めて大きい影響力を持っており、成果に間接的な影響を及ぼしていた。精神科と他の診療科の相違については、現在分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は計画通り、精神科医療における多職種連携のプロセスと効果、およびその効果へ関連する要因の解明についての質問紙調査を実施し、多職種連携の成果に影響を及ぼすプロセス要因を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の調査で、精神科医療機関における多職種連携の「チームの凝集性」は「意思決定因子」に対し、極めて大きい影響力を持っており、成果に間接的な影響を及ぼしていた。しかしながら、「チームの凝集性」に影響を与える「チーム外の問題」「コミュニケーション問題」「機能不全問題」などの阻害要因は明らかになったものの、因果モデルの中での説明率は低く、それを規定している主たる要因を見出すことはできなかった。そのため、凝集性を高める働きをしている多職種チーム内力動の存在が予測され、その具体的な内容について解明することが必要となった。 近年、チームのパフォーマンスを高める職場環境の要因である心理的安全性(Edmondson, 2021)の概念が注目されている。精神科医療機関の多職種連携においても、心理的安全性に着目することで、多職種チーム内の凝集性を高めるプロセスを解明することにつながると考えられる。そこで2023年度は、精神科医療機関の多職種カンファレンスの場で連携の実効性を高める心理的安全性を規定するリーダーやメンバーの実際の行動を特定するために、参与観察による調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に購入予定だったプリンターは購入せずに対応できたため、2023年度の参与観察に必要な外付けハードディスク、ビデオカメラ代、ICレコーダー代に使用する。
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