研究課題/領域番号 |
22K10849
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
濱上 亜希子 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (70780485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 具象的アプローチ / 診療所 / 虚血性心疾患 / 心不全 / 循環器看護 |
研究実績の概要 |
R4年度は,診療所に通う虚血性心疾患患者を対象に,これまで事例介入研究として,具象的アプローチを用いて実践した内容を質的に分析した。 分析の結果,痛みや恐怖感,安静による日常生活困難など,自身に生じている困難や混乱を明確に捉えにくく,まずは支援のニーズが自身に存在していることへの気づきを支えることが重要であることが分かった。また,患者は心臓という見えない臓器に対し,知覚した症状や違和感とそれらの経時的な変化,生活する上で生じた心理的・社会的変化,身体を労ろうとする自身への気づきなど,詳細で深い体験の振り返りを通して,具象化することができていた。支援者自身が,語りの中から患者に生じた変化や気がかりを敏感に捉え,その部分の丁寧な語りを意図的に促すことが必要である。また,療養生活を工夫することで,病いを制御可能なものであると知覚し,これから先の軌跡が良い方向へ進む可能性を予期できた場合には,さらなる再発予防行動をとろうとするため,療養行動による体感的な変化や自身で取り組みを評価するような語りを促す支援が有用であることが示唆された。 さらに,情報提供といった実際の教育的な支援を行う際には,まずは自身にとって有益な情報を得ようとする段階を支えることが必要であることが分かった。患者が生活習慣病特有の自己責任に傾倒していたり,ある一つの衝撃的な出来事のみに関心が集中しているような場合には,療養環境全体に目を向けられるような投げかけをし,患者の捉える世界を広げたり,現在の心臓の状態について自身で語ってもらうことにより,問題が理解不足にあるのか,認識の誤りにあるのかといった困難の本質に迫ることができることや,語りの内容と客観的データを意図的に結び付けることによって,療養行動との関連性への気づきを促進することも可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質的分析を終え,モデルの構想を得るところまでは進めることができたが,新型コロナウイルスの影響により,新たな介入研究を進めるための実施可能な診療所の選定が困難であったことなどにより,倫理審査を終えることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
診療所に通う虚血性心疾患患者に対する具象的アプローチの効果を量的に明らかにするため,約30名を対象に介入研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入研究の際に使用する測定用具類(血圧計やフレイル判定のための運動機能分析装置等)を初年度に購入する予定であったが,新型コロナウイルスの影響により,実施可能な診療所が選定できなかったため,物品の購入も見送った。次年度は,もともと初年度購入予定であった機器類と,介入に係る交通費や謝品などを合わせて支出することとなる。
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