研究課題/領域番号 |
22K10861
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
布谷 麻耶 (吹田麻耶) 武庫川女子大学, 看護学部, 教授 (70514735)
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研究分担者 |
高橋 美宝 武庫川女子大学, 看護学部, 助教 (20912132)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 大腸内視鏡検査 / 苦痛 / 支援モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、大腸内視鏡検査を受ける炎症性腸疾患患者の苦痛軽減に向けた支援モデルを開発することを目的とする。 2022年度は第一段階として、大腸内視鏡検査を受ける炎症性腸疾患患者が体験する苦痛を明らかにするために、発症後に大腸内視鏡検査を1回以上受けた経験がある寛解期の患者10名に半構造化面接調査を行い、 質的記述的に分析した。結果、患者は大腸内視鏡検査に伴い、【前処置による心身の負担】、【検査中の痛み】、【検査への恐怖】、【異性の医療者に対する抵抗感】、【検査後の疲労と病状悪化】、【検査結果への不安】、【時間と費用の負担】という苦痛を体験していた。【検査中の痛み】には『炎症時の内視鏡操作に伴う痛み』、『内視鏡挿入時や体位変換時の合併症による痛み』、『腸管屈曲部に内視鏡が当たる痛み』、『送気による腹部の張りと痛み』があった。 炎症性腸疾患の大腸内視鏡検査は疾患活動性評価や治療効果の判定、発がんのサーベイランスを目的として行われるため、患者は診断後も定期的に検査を受ける必要があり、患者の苦痛はその後の検査や治療のアドヒアランスにも影響する。しかしながら、炎症性腸疾患患者に特化した大腸内視鏡検査に伴う苦痛については、これまで国内外の研究で明らかにされていなかった。第一段階の調査結果より、腸管の炎症や合併症によって起こる炎症性腸疾患患者特有の大腸内視鏡検査に伴う苦痛が明らかとなり、それが今後の検査での苦痛につながらないように苦痛軽減に向けた具体的な看護実践への示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に則り、2022年度は第一段階の患者への面接調査とデータ分析、結果のまとめまで実施した。COVID-19の感染状況を考慮し、面接はすべてビデオ会議ツールまたは電話にて実施としたが、患者会のご協力のもと、参加者より豊富な語りが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、これまでに実施した患者への面接調査結果をもとに大腸内視鏡検査を受ける炎症性腸疾患患者の苦痛に影響する要因を洗い出し、苦痛の程度とその影響要因を測定する質問紙原案を作成する。 2024年度から2025年度は、大腸内視鏡検査を受ける炎症性腸疾患患者の苦痛の程度とその影響要因を明らかにするために、前段階で作成した質問紙を用いて、検査経験のある患者を対象に質問紙調査を実施する。調査は関西地区にある炎症性腸疾患患者を診療する医療機関3施設に依頼し、計400名の患者を対象とする計画である。得られた回答データは統計学的に分析し、結果をまとめる。 2025年度から2026年度年度は、大腸内視鏡検査を受ける炎症性腸疾患患者の苦痛軽減に向け、臨床で活用できる支援モデルを作成する。運営委員会のメンバーでこれまでの調査結果をもとに支援モデル案を作成し、患者と医療者による有用性と妥当性のチェックを受け、その結果に応じて支援モデルに修正を加え、確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究実施に関する打ち合わせや本テーマに関する最新の知見を得るための学会に参加するための旅費を計上していたが、COVID-19感染状況によってオンラインでの打ち合わせや学会参加となったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、第二段階の質問紙調査の実施に向け、関連文献の収集や研究協力機関との打ち合わせを実施するための費用として使用する計画である。また、対面での学会開催も増える見込みのため、成果の発表や最新の知見に関する情報収集を行うための学会参加費・旅費として使用する計画である。
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