研究課題/領域番号 |
22K11093
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
後藤 成人 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教 (30635347)
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研究分担者 |
影山 隆之 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (90204346)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 自殺対策 / ゲートキーパー養成 / 研修効果 |
研究実績の概要 |
2023年度は、対象者60名(対照群30名、介入群30名)に対してゲートキーパー養成研修前後と一ヶ月後、三ヶ月後、半年後までの調査を実施した。対照群は研修前後のアンケートには30名(回収率100%)の回答があったが、それ以降回答はなかった。介入群は半年後まで24名(回収率80%)の回答があった。そこで、2023年度は、対照群と介入群の研修後のデータの比較と、介入群の研修前から半年後までの効果の持続性を分析した。 分析の結果、研修前は両群間に差はなかったが、研修後では介入群のみ、自殺に対する考え方(自殺観)と、自殺対策に対する自信の一部の項目が有意に好転していた。一方、自殺に関する知識とSuicide Intervention Response Inventory (Neimeyer & MacInnes. 1981)によって評価した自殺念慮者への対応能力については両群間で差がなかった。この結果から、少なくとも自殺観や自殺対策への自信については、研修によって向上する可能性があることが示唆された。また、介入群について研修効果の持続性を分析すると、自殺観と自殺対策に関する自信は研修後に好転し、三ヶ月後まではその状態が継続したが、半年後には研修前の状態に戻っていた。そして、自殺念慮者への対応能力は、研修後や一ヶ月後には変化がなく、むしろ三ヶ月後や半年後に好転し、自殺に関する知識は変化が見られなかった。この結果は、自殺観や自殺対策への自信は研修によって一時的に向上するものの、その効果は半年後までは続かず、自殺念慮者への対応能力はむしろ数ヶ月から半年後に向上する可能性があることを示している。 以上のような2023年度の調査結果より、ゲートキーパー養成研修後、半年後を目処にフォローアップ研修を行うことが、研修効果を持続させることに役立つ可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度である2022年度が、まだCOVIDの分類が2類であり、そのためにゲートキーパー養成研修を実施できる状態になかった。2022年度の後半に入り、少しずつ研修を再開することができたため、データの収集を行うことができるようになったものの、現状では、当初予定していた対象者数よりもずっと少ない状況である。加えて、対照群の確保や、対照群の持続性の調査に関する協力者が少ないことなどが本調査の難しい部分であり(介入群と異なり研修を受講していないため、調査用紙への回答にモチベーションが上がらない可能性もある)、今後は対象となる自治体を増加する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
COVIDが5類感染症に分類されてからは、ゲートキーパー養成研修を再開している自治体が増えてきている。そこで、研修を再開した自治体に調査協力を依頼したところ、新たに4つの自治体が調査に協力してくださることとなった。そのため、2024年度は新たな自治体も含め、ゲートキーパー養成研修の効果と持続性について、対照群と介入群での比較を行う。対象者数を増加し、より正確な分析が行えるように調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、まだCOVIDの影響が残っており、ゲートキーパー養成研修を再開している自治体が少なく、対象者数が十分に確保できなかったことから、調査用紙の印刷や発送、回収をするための費用が予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。ただし、2024年度はゲートキーパー養成研修を再開し、本調査へ協力してくださる自治体が4か所増加するため、調査用紙の印刷や発送に使用する予定である。また、2024年度は研修終了後一年後までのデータも分析できるため、学会発表や論文投稿なども行う予定である。そのため、研究成果の公表に関する費用としても使用する計画である。
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