研究課題/領域番号 |
22K11217
|
研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
川上 嘉明 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (20582670)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 老衰死 / BMI / 栄養摂取量 / ロングターム・ケア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,老衰死に至る前の「数ヵ月から数年かけて変化する観察可能なパラメータ」を科学的に分析することにより,老衰死の概念や判断の基準,また死に至るまでの段階を客観的に明確にすることである。そのため,老衰死に至るまでのBody Mass Index(kg/m2,以下,BMI),食事摂取量(kcal),また食事以外の水分摂取量(ml)の三つのパラメータを継続的に観察・分析することにより,老衰死の概念や判断基準に重要な示唆を提示することを企図している。 当該年度においては,上記の三つのパラメータのデータが電磁的に記録保存され,老衰死と死亡診断された高齢者が多数発生している特別養護老人ホーム5施設を研究対象施設として確保することができた。また施設管理者に対し文書で研究の説明を行った後,生存し施設に現在入居中の高齢者を含め1875人分という,これまで本研究者の研究における対象者数を上回り,他の研究でも見ることができない多人数の縦断的なデータの入手が完了したところである。 高齢者ケア臨床ではその実践知により体重減少,食事摂取量や水分摂取量の減少から死亡の時期が差し迫っていることを推定してきた。しかし,実際に収集されたデータを分析し死期や老衰死に至る軌道が明らかにされた研究はない。収集された比較的多人数のデータを分析することによって,死に至る高齢者のBMIと食事摂取量および水分摂取量の特異的な減少の軌道が明らかとなり,その軌道から本研究の目的である「老衰死」の概念が明らかにできると考えられる。 さらに収集されたデータには現在生存している高齢者のデータも含まれるため,死に至った高齢者との比較分析も可能となっている。これによって,本研究の目的である死に至るまでの段階を客観的に明確できると期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては,BMI,食事摂取量(kcal),また水分摂取量(ml/)の三つのパラメータのデータが電磁的に記録保存され,老衰死と死亡診断された高齢者が多数発生している特別養護老人ホーム5施設を研究対象施設として確保した。また生存し施設に入居中の高齢者を含め1875人分の縦断的なデータの入手が完了した。 パラメータの種類によって,同じ施設で異なるアプリケーションに記録保存されたものが含まれている。このため対象者の名寄せ,データが欠落している対象者の除外,提供された食事栄養量(kcal)を特定した上で食事摂取量(kcal)を求める等のデータクレンジングを進めている。対象者により提供される食事の種類(常食,刻み食など)が頻繁に変更されることがあり,正確な食事摂取量を計算するために時間がかかることがある。またデータの欠落を補うため施設に細かく照会する作業を行う必要も生じている。これらの作業が完了次第,研究開始翌年度にはデータ分析に進むことができる見通しとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究開始翌年度の早期にデータクレンジングが完了する見込みである。 その後,各パラメータの経時的な軌道を明らかにし,死に至るまでの各パラメータの変化と関係,また生存する高齢者との比較分析を行い,特に老衰死に至った高齢者の特徴を統計分析によって明らかにする。これらによって,老衰死の判断基準とともに死に至る軌道から見た老衰死の概念を明確にする。 上記の成果については,現在内容を企画している新刊書籍で言及し,また海外ジャーナル数誌に投稿し研究結果を発表する予定である。 上記により,現在研究計画を変更する必要はなく,遂行する上で新たに生じている課題はない。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度末までの業務請負費用(研究対象施設5施設分)の支払いを翌年度に行うようにしたことと,対象高齢者施設におけるCovid-19の感染予防対策の影響により,施設へ直接訪問できる回数が制限されたため,次年度使用額が生じた。
|