研究課題/領域番号 |
22K11227
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田辺 肇 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60302361)
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研究分担者 |
井上 猛 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70250438)
戸田 裕之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 精神科学, 准教授 (00610677)
長峯 正典 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 行動科学研究部門, 教授 (70725217)
池田 龍也 聖泉大学, 人間学部, 講師 (20784523)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 生育歴的なトラウマ / 慢性・反復性のうつ / 解離 / 情動調整不全 / ACE / アセスメント尺度 |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性・反復性のうつの一部に、生育歴的なトラウマを背景にもち、解離や情動調整不全といった特性に焦点を当てた支援が必要なケースが一定数あるとの問題意識に基づき、その支援の展開に寄与するために、Ⅰ:現場での利用に適した子ども期の虐待や逆境体験などの虐待周縁の否定的生育環境の影響のアセスメント尺度の心理測定学的特性と妥当性の検討、Ⅱ:子ども期の虐待的環境などの生育歴的背景が、解離や情動調整不全という個人特性要因を媒介し、慢性・反復性の治療抵抗性のうつに結びつく媒介モデル、およびその媒介過程を抑制する要因を検討する媒介調整モデルの検討、Ⅲ:それらの成果を基に、地域精神保健および小児精神保健の現場の日常業務に組込むことのできる、簡便な手法の現場実装の効果の検討、を行うものである。 Ⅰについて、①代表者の邦訳したACEの尺度であるCATSの心理測定学的特性と妥当性の検証をこれまで蓄積されてきた大規模データの再分析(個人情報との連結不可能な形で保存されている既存資料の再分析)により、多母集団解析などの高度な統計モデルによる因子構造の厳格な検討、得点分布の標準データの提供などを行う計画のうち、2023年度には青年のみならず成人を対象とした既存データを含めたデータセットにより、多母集団解析(性別と年齢集団別)による測定不変性の検討を行った。また、項目反応理論(IRT)を用いた統計モデルによる心理測定学的な特性の検討を行った。 また、②赤堀・田辺,(2018;2019)で検討してきた「甘えられない環境」尺度の洗練化と妥当性の検証、については、2022年度の15項目版の発表に引き、続き洗練のための検討を行った。 一方Ⅱについて、対処方略としての情動調整の不全では無く、特性としての情動反応性を捉える尺度について、国際的な研究で用いられている尺度の邦訳版を作成し、基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は社会状況(SARS-CoV-2感染拡大)への対応の影響から、対面での活動が制約されていたため、若干進捗に遅れが出ているが、現段階の主な作業は、非対面でのものであるため大きな影響は無かった。2023年度は学会活動も再開可能となり、次第に研究活動はキャッチアップしてきている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、Ⅰ:現場での利用に適した子ども期の虐待や逆境体験などの虐待周縁の否定的生育環境の影響のアセスメント尺度の心理測定学的特性と妥当性の検討、Ⅱ:子ども期の虐待的環境などの生育歴的背景が、解離や情動調整不全という個人特性要因を媒介し、慢性・反復性の治療抵抗性のうつに結びつく媒介モデル、およびその媒介過程を抑制する要因を検討する媒介調整モデルの検討、Ⅲ:それらの成果を基に、地域精神保健および小児精神保健の現場の日常業務に組込むことのできる、簡便な手法の現場実装の効果の検討、を行う。 なお、Ⅰについては、大規模サンプルの再分析で明らかになってきたCATSの因子構造が当初の想定以上に複雑であることが判明したため、シンプルなアセスメントツールとしての得点化、あるいは、プロフィールの描出の手順などの工夫を行うための基礎的な検討を行う必要性が新たな課題として浮かび上がっており、2024年度はその点に焦点づけた検討も行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで社会状況(SARS-CoV-2感染拡大)への対応の影響から、対面での活動が制約されたため、若干進捗に遅れが出ていた。その分の執行にかかる経費が繰り越しとなっていた。2023年度は、学会活動も再開可能となり、国内学会における発表、ならびに、2024年度の国内、国外の学会における発表にむけた準備を行った。為替の影響もあり、国際学会での成果の発表に多くの経費がかかることとなった(経理処理は2024年度を予定。現在、立替払いしている)。幸い、これまでの繰り越してきた予算を充てることができるので、計画通り研究を進めていき、学会発表も併せて行う予定である。2024年度に計画している予算と合算して執行する予定である。
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