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2022 年度 実施状況報告書

住民の強みを活かす出生世代別健康づくりの着想支援デジタルガイド作成

研究課題

研究課題/領域番号 22K11266
研究機関愛媛県立医療技術大学

研究代表者

入野 了士  愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (70634418)

研究分担者 鳥居 順子  愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (00249608)
齋藤 希望  聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 講師 (40749800)
金澤 知典  愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (50777133)
長尾 奈美  愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (50805918)
栗原 幸男  高知大学, 医学部, 特任教授 (00215071)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード出生世代 / 地域アセスメント / 保健師 / ストレングス / 居住地域特性
研究実績の概要

本研究は、健診データの出生世代間差に現れる各出生世代の健康リスクに対し、対応する世代の生活習慣特性や生活行動から強みを見いだし、健康づくり(生活習慣病対策)に活かす着想を支援する看護研究である。自治体と協働して知見を得、先行研究からの発展を目指すこととしている。
研究初年度は、1)地区アセスメントの実践例を基にした住民の生活行動を概観するための自治会単位データの収集と整理方法を明らかにすること、2)文献検討を基に、保健師による地域特性を考慮した生活習慣病予防の支援の特徴を明らかにし、公衆衛生看護学教育に示唆を得ることの2点を主な目的とした。
1)については、佐伯が考案した地域構造のモデルにおける、地域の歴史、自然・地理的環境と地域に暮らす人々の人口学的構成の枠組みを用いて、地区アセスメントに要したデータの収集や整理に関する内容を73コード抽出し、時系列で整理して図表化した。実践者は既存資料で情報を概観後、指導者が地区のステークホルダーから簡易な聴き取りを行い、聴取りできる生活行動の種別を判別していた。最終的に地理空間情報として地図に落とし込み、データを一元化し、地区内外の生活行動との関連を概観し確認していた。
2)については、2020年10月に医中誌Web版(Ver.5)を用いてシソーラス検索を行った。[保健師or公衆衛生看護]and[生習慣病(および各主要疾病名)or健康増進]と検索し、677文献を得た。その中から原著論文に絞った122文献を抄読した。そのうち、地域特性を考慮した支援方法に関する具体的記述がなく除外基準に該当する文献を削除し、本研究の目的に合致した6文献を分析対象とした。保健師による地域特性を考慮した生活習慣病予防支援には、【生活習慣病の要因となり得る地域特性を示して住民に気づきを促す】【地域特性に合わせた生活習慣病の予防方法を提案する】など4つの特徴があった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は以下の知見を得ることができた。
出生世代毎の生活習慣特性や生活行動から強みを見出すためには、自治体レベルでは既存資料や自治体が所有する一次資料の加工が重要である。分析に用いるデータの中でも、公開度が低い自治会単位データの内容や収集手順を実践例を基に整理した。自治会単位データの収集には、データ所管部署での加工や個票からの収集、住民からの聴き取りが付帯していた。そのため、データ内容のリスト化や取得先の整理、データ区分ごとの公開度の確認を経て、地区アセスメントに必要なデータの絞込みや依頼等の手順を着実に行うことが、自治会単位データの収集につながっていたことが明らかとなった。また、地区内で完結しない地区住民の生活行動と健康課題との関連を概観できるように、住民から聴き取り可能な生活行動の種別確認や地図へ落とし込み、データを段階的に整理することも住民の生活行動の概観を支援すると考えられた。
保健師による地域特性を考慮した生活習慣病予防支援における4つの特徴から、保健師が、生活習慣病の要因となり得る地域特性を示していたことは、無自覚なまま進行するため予防の動機を得にくい生活習慣病の特徴を踏まえたうえで、住民にわが事としての気づきと内発的な動機付けを促していることがうかがえた。また、地域特性に合わせた生活習慣病の予防方法を提案していたことから、保健師は地域特性の中から生活習慣病の予防に繋がる地域の強みを捉えていたと考えられた。さらに、保健師が健康課題の解決を図る機会を活かして、健康を支える地域文化や風土を醸成していたことは、個人と地域全体への波及効果や地域の変容を意識した、より高次の公衆衛生看護活動の実践と言えた。これらのことから、早期に暮らしの場へ赴いて住民と対話しながら地域特性を把握する機会の確保と、地域特性と健康課題との関係をアセスメントする視点を育むことが重要と示唆された。

今後の研究の推進方策

2022年度の研究結果を踏まえて、2023年度は1)小地域での生活行動の強み例を収集・整理すること、2)各出生世代の生活習慣特性や生活行動の強みを抽出し、健康リスクとの関連を整理することを予定している。
1)については、研究チームの所属大学が30数年間蓄積してきた、地区の観察記録、地区への凝集性、インフォーマルサービス等のデータも活用し、県内健康づくり所管部署らと協力してデータの充実を図る。また、国民健康・栄養調査や健康づくり計画アンケート等の結果から、喫煙状況、食生活変化等の具体的な住民の生活習慣データを用いて、出生世代別健康リスクの将来予測と住民の強みを活かした健康づくりの内容がリンクできるように、これらのデータ項目を一覧化することも予定している。
2)については、研究フィールドが毎年報告している国保・協会けんぽの分析結果も踏まえて、自治体単位、二次医療圏域単位での健康リスクを抽出した後、1)の結果を踏まえて、それらの関連について整理、検討することとしている。
保健活動実践の場における健康づくりの課題等についても抽出できるように、保健所や自治体の健康づくり担当者との意見交換の場を設定し、研究で得られた知見の位置づけ等についても検討することとする。また、得られた知見については、研修会等の場を設定し、意見交換することも予定している。

次年度使用額が生じた理由

2022年度の研究成果を研究チーム及び研究協力者で共有するため、研究成果報告会を2023年3月に対面で開催する予定であったが、COVID-19対応で事業実施が後ろ倒しになった研究協力者が出張が適わず、オンライン開催に切り替えて実施しした。対面開催の方がより意見交換がしやすいため、会の開催に必要な旅費及び会議費用を次年度に繰り越すこととした。また、情報収集を予定していた学会や研究会が同様にオンライン開催になったことから、次年度対面開催の学会参加に向けて必要経費を繰り越すこととした。
2023年度は、保健所のCOVID-19対応が一段落着くとの連絡を得ており、初年度に予定していた対面開催による意見交換の場を再度設定し、関係者から意見を聴き、研究推進に役立てることを予定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] チーム対抗の健康プログラム参加者におけるコミュニケーション頻度と歩数等との関連2023

    • 著者名/発表者名
      入野了士,長尾奈美,近藤珠美,前田唯,篠崎美穂,黒川夏実,渡辺千景
    • 雑誌名

      四国公衆衛生学会雑誌

      巻: 68(1) ページ: 37-45

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 保健師による地域特性を考慮した生活習慣病予防支援の特徴2023

    • 著者名/発表者名
      長尾奈美,入野了士,瀬戸裕一,金澤知典,鳥居順子
    • 雑誌名

      四国公衆衛生学会雑誌

      巻: 68(1) ページ: 47-52

    • 査読あり
  • [学会発表] 住民の生活行動を概観するための自治会単位データの収集と整理方法~地区アセスメントの実践例から~2022

    • 著者名/発表者名
      入野了士,長尾奈美,瀨戸裕一
    • 学会等名
      第42回日本看護科学学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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