研究課題/領域番号 |
22K11270
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
大上 哲也 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (60734324)
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研究分担者 |
山上 徹也 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (60505816)
甲斐 英朗 東北大学, 医学系研究科, 技術補佐員 (70648261) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー / 軽度認知障害 / MCI / 予兆認知機能低下 / 認知機能検査 / スクリーニング / 予兆 |
研究実績の概要 |
認知症の早期発見の重要性が指摘されているが、認知症の兆しを的確に捉えることができていないのが現状であり大きな課題である。簡便なスクリーニング手法がない事がその理由の一つである。そこで、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を早期に発見する為のスクリーニング手法を開発する事を目的として、本年度より研究を開始した。 【対象】下記(A、B)を対象として実施。 A:埼玉県等地域で開催する「いきいき脳健康教室」等の認知機能測定会の参加者。 B:青森県外ヶ浜町の認知症初期集中支援チームが選抜した高齢者。 【方法】最新の認知機能測定機(脳活バランサー:CogEvo)を用いて認知機能5項目(見当識、注意力、記憶力、空間認識力、計画力)を測定し、高齢者の認知機能の衰えの特徴について検討を開始した。また、種々の認知機能検査(ニンテスト、語想起、模倣、書写等)を実施し、脳活バランサーと認知機能検査を組み合わせることにより、MCIの予兆をより鋭敏に検出できないか、その可能性についての検討も開始した。 【実績】測定会参加参加者208名の内、全項目を実施できた50歳以上の148名を解析した。認知症群(MMSE 23点以下)を除外後、MCI群(MOCAJ 25点以下)と健常群(MOCAJ 26点以上)の2群を比較。解析の結果、認知機能5項目の内、計画力、注意力に於いてはMCI群は健常群に比べて有意に低値を示した。また、語想起、嗅覚テストであるニンテストの検査では、MCI群は健常群に比べて有意に低かった。本年度の研究において、MCIの予兆として、計画力や注意力の衰えが示唆されるという注目すべき知見が得られた。また、脳活バランサーに語想起やニンテストの検査を組み合わせることにより、MCIの予兆をより鋭敏に検出できる可能性も示唆された。引き続き最適なMCIのスクリーニング手法の確立を目指して研究を実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。しかしながら、新型コロナウイルス 感染症の影響を大きく受け、「対象者(被験者)の確保」に関しては大変苦労している。 認知機能の測定会では、「対面」で認知機能を測定する必要があるため、感染対策に万全を期して実施している。具体的対策として、衛生面はもちろんのこと、認知機能の測定会の回数、測定者の数に関しては大幅に縮小せざるを得ない状況を強いられている。また、測定会の参加者(被験者)の募集人数も少数例に抑えて実施している。このように「対象者(被験者)の確保」に苦慮しながらも、埼玉県はじめ各地域で開催した「いきいき脳健康教室」等の認知機能測定会では、合計208名を確保することができ、幸いにも目標値である200名を超え、目標値を確保することができた。 しかしながら、一方、青森県外ヶ浜町に関しては、高齢過疎地であり(高齢化率52%、人口約5000人)、コロナ禍の影響をまともに受けている。測定会場として地域包括支援センター等で対面の測定会を計画していたが、行政の判断で一度も会場での開催の許可がでていない。その結果、認知症初期集中支援チームが選抜する高齢者20名程度を対象者(被験者)の目標値としていたが、数名にとどまった。このように大変厳しい状況下ではあるが、認知症初期集中支援チームのスタッフである地域包括支援センター職員(研究協力者)が、対象者(被験者)の居宅を直接訪問するという形式に変更することにより、少数例ではあるが貴重な認知機能の測定データを得ることができた。 以上、上述のように、特に「対象者(被験者)の確保」に関して、コロナ禍の影響を大きく受け苦慮しているが、研究協力者はじめ関係者の多大な協力を得ながら、本研究はおおむね順調に進展することができており、上記【研究実績の概要】で述べた成果をあげることができている。
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今後の研究の推進方策 |
・次年度は、4年計画の2年目である。次年度からは縦断研究を開始し、1回目の認知機能の測定(T1)から約1年後の2年目の認知機能の測定(T2)を実施する。T1とT2を比較し、脳活バランサーで測定した認知機能5項目(見当識、注意力、記憶力、空間認識力、計画力)の推移を解析し、高齢者の認知機能の低下の特徴を明らかにし、MCIの予兆を把握する。また、脳活バランサーに加えて、ニンテスト、語想起等の認知機能検査を組み合わせることにより、MCIの予兆をより鋭敏に検出できないか、その可能性についても検討し、引き続き、最適なMCIのスクリーニング手法の確立を目指していく。 ・研究を遂行する上での課題 新型コロナが5類に引き下げられることとなったが、測定会では、対面で認知機能を測定する必要があるため、引き続き感染対策に万全を期して実施していく。具体的対策としては、衛生面はもちろんのこと、安全を第一とし、認知機能の測定会の回数、測定者の数並びに参加者(被験者)の数に数に関しても状況に応じた最小限の規模で実施していくこととする。 特に、青森県外ヶ浜町は、コロナ禍の影響をまともに受けている高齢過疎地(高齢化率52%、人口約5000人)であり、医療体制が脆弱な町でもあることから、「5類」に引き下げられても、会場での「対面」による測定の許可がおりる時期が不透明である。これらの状況を鑑み、認知症初期集中支援チームが選抜する参加者(被験者)の目標値を約20名から5名程度に下方修正する。尚、5名程度に下方修正しても、参加者(被験者)の合計数は、他の地域を併せて、目標値の200名に既に達成しているので、大きな影響はない。 尚、1回目の認知機能の測定(T1)から約1年後の測定(T2)に関しては、コロナの影響が不透明なことより、具体的な数値目標は設定せず、可能な限り努力し得られた測定データで解析することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】新型コロナ感染拡大防止の観点から、対面による認知機能の測定会並びに会議の回数や規模を当初計画より縮小することが必要となった。特に、青森県外ヶ浜町は、高齢過疎地(高齢化率52%、人口約5000人)であり、医療体制が脆弱な町であることから、行政の判断で開催が中止となった。このように、コロナ禍の影響により、当該計画部分である「旅費」並びに「会議費」を繰り越す必要が生じた。 【使用計画】新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げられることとなったことから、対面による測定会並びに会議の回数や規模も当初計画のレベルまでに回復することが見込まれ、繰り越しとなる「旅費」並びに「会議費」に関しては、2023年度内に使用し予算を達成する見込みである。
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