研究実績の概要 |
中枢神経系損傷による運動機能障害が、残存するシステムにより機能代償されるメカニズムを理解する。第一次運動野は、大脳皮質と脊髄を結ぶ皮質脊髄路ニューロンを豊富に含む領域である。この領域に損傷を受けると運動麻痺が生じる。しかし、このような麻痺は回復することがある。マカクサルを用いた行動・脳領域・分子レベルの解析により、第一次運動野や皮質脊髄路を損傷した後にリハビリ訓練を行うと、手指の把握運動(特に手の巧緻性)が回復すること、その背景に大脳皮質運動関連領域(特に腹側運動前野)による機能代償があることが報告された。 これまでの研究では、申請者は神経回路レベルの解析により、腹側運動前野から小脳核(特に室頂核)へと下降性に投射する経路が第一次運動野損傷後の機能回復時に増加することを国際学術雑誌にて報告してきた(Yamamoto et al., 2019, JNS)。また、頭頂間溝野へと向かう大脳皮質間投射においても、腹側運動前野ニューロンは可塑的な変化が生じることを国際学術学会などで報告してきた(Yamamoto et al., 2021, 44th Annual Meeting of the JPN Neuroci Soc etc.)。これらの知見は、損傷を受けた経路自体が再生しなくても、損傷による直接的な影響を免れた他の大脳皮質運動関連領域が代償領域として機能することにより、運動機能が回復することを示唆するものである。 上記研究過程において、マカクサルと齧歯類では可塑性に関連する小脳区分マーカーの発現パターンが異なることを発見し、小脳における分子発現の特徴から霊長類の進化的適応が解ける可能性を示唆した(Yamamoto et al., 2022, The 100th Anniversary Annual Meeting of The Physiol Soc of JPN etc.)。
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