研究課題/領域番号 |
22K11321
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
齊藤 展士 東京家政大学, 健康科学部, 教授 (60301917)
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研究分担者 |
笠原 敏史 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10312422)
平田 恵介 東京家政大学, 健康科学部, 講師 (50862603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / バランス / 外乱刺激 |
研究実績の概要 |
我が国の高齢化は急速に進み,社会保障費の膨張など社会問題を引き起こすレベルにまで達している.加齢は身体機能や認知機能の低下を引き起こし,転倒・骨折・寝たきりを助長する.そのため,高齢者の転倒を効果的に予防することは極めて重要な課題である.我々は高齢者の転倒予防やバランス能力の改善を目的に,床面水平移動刺激に対する立位バランス保持の適応を調べた.また,外乱刺激を使用したバランス能力の改善のためのトレーニング方法を考案する予定である. 転倒は,つまずくなど環境に合わせて身体を適切に動かせいないことが原因でバランスを崩す内的要因と滑りなど環境が原因でバランスを崩す外的要因の二つの要因から発生する.内的要因における転倒は,環境に合わせて繰り返し練習することで運動学習が起こりバランス改善に繋がる.今回,環境が原因でバランスを崩す外的要因においても,外乱刺激を何度も経験させることで身体に適応が起こり,バランス改善に役立つか調べた.予測できないタイミングで水平移動する床面上で立位を保持する課題(外乱刺激課題)を100試行繰り返し実施した結果,外乱刺激の繰り返しによりバランスが非常に明確に改善されることが示された.特に身体の前方動揺が減少することでバランスが改善された.この改善は時間が経っても持続した.これらのことは,転倒が起こる二要因ともに運動学習が起こることを示唆している.さらに,転倒が起こる様々な条件を想定した外乱刺激を日常的に経験できる環境を作ることが,転倒予防の寄与に結びつくと考える. 今後に関しては,筋の振動刺激により筋緊張を変化させることが可能であるので,筋の振動刺激による予測的姿勢制御への影響も加えて調べ,加齢により低下するバランス能力向上に寄与することを目指したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本助成金申請時の最終目標は,バランス機能を改善するためのトレーニング方法の構築であり,その目標達成のため現在,床面水平移動外乱刺激装置を用いたバランストレーニングによりバランス能力の改善が見込めるか確認した段階である.次の段階として,このバランス能力の改善が効率よく達成されるための繰り返しの回数や頻度を調べなければならない.また,現段階では健常若年者における見通しであるため,高齢者のリクルートが必要とされる.このような観点から,本研究の進捗は申請時の予定よりやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
申請時の目標に沿って可能な限り研究を推進させるためには,床面水平移動外乱刺激のパラメーターを模索する必要がある.まずは健常者で外乱刺激の速度,繰り返しの回数,頻度(日数)を変化させてバランス能力の改善にそれらの要因が影響するか調べる必要がある.さらには,高齢者でも同様の検証を試みなければならない.加えて,認知機能の低下がバランス能力改善に与える影響についても指摘されているので,床面水平移動外乱刺激によるバランス能力改善と認知機能との関係についても探求する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本助成金の交付が決定した当時,まだ新型コロナウイルス感染症拡大の影響が強かったため,被験者確保の見通しが立たなかった.そのようなことから,申請時に予定していた測定機器の購入を一時,控えた.2023年度にその予定していた測定機器を購入する手続きを進めたが,測定機器の製造元が別業者に買収され統合された.そのため,2023年度の予算執行に変更が生じ,次年度使用に繰り越す形となった.2024年度の使用計画としては,実験データの信頼性を確かめるための統計解析システム(IBM・SPSS)を導入予定である.
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