研究課題/領域番号 |
22K11324
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
松尾 真吾 日本福祉大学, 健康科学部, 講師 (30725700)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スタティック・ストレッチング / 温熱療法 / 経頭蓋直流電気刺激 / 関節可動域 / stiffness / せん断弾性率 / 伸張耐性 |
研究実績の概要 |
ストレッチングによる関節可動域改善は物理的要因ならびに神経学的要因の変化により生じるとされており,近年では特に感覚の変化といった神経学的要因の影響が大きいと考えられている。このことから,感覚の変化を惹起する介入とストレッチングの併用により,より大きな可動域改善効果が得られると考えられるが,その併用効果について物理的ならびに神経学的要因の両側面から詳細な検討はなされていない。そこで本研究では,感覚の変化を惹起する介入として,末梢への刺激による広汎性侵害抑制調節と,経頭蓋直流電気刺激に着目し,これらの介入方法とスタティック・トレッチング(static stretching,以下SS)の併用効果について,物理的要因として組織の弾性率・硬さの変化を,神経学的要因として知覚・痛覚閾値の変化を用いて比較・検証することを目的とした。本研究から得られる成果は,ストレッチング効果の基礎的資料を構築する上で極めて重要である。 2023年度は,感覚の変化を惹起する末梢への刺激として温熱療法とSSの併用効果を検討した。対象者の右下腿三頭筋に対し5分間のSSを行うSS群,対象者の左前腕部に対し市販のホットパックを用いて10分間の温熱刺激を行うheat群,対象者の左前腕部に10分間の温熱刺激を行った後に,右下腿三頭筋に対して5分間のSSを行うheat+SS群の3群を設けて比較・検証した。結果,関節可動域について,介入群と介入前後の値の間に相互作用が認められ,heat+SS群における介入後の可動域の増加は他の群よりも大きい傾向にあった。最大受動トルクはSS群でのみ介入後に有意に増加し,heat+SS群は増加傾向にあった。また,stiffnessは全ての群において介入後に有意に低下した。 上記の結果から,温熱療法とSSの併用により,介入後により大きな関節可動域増大効果が得られる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度について,末梢への刺激とストレッチングの併用効果について検証し,概ね実験を完遂することができた。一方で機器の故障により,予定していた対象者数を達成することができず,またその影響により中枢への経頭蓋直流電気刺激とストレッチングの併用効果検証に関する実験を開始することができなかった。2024年度は末梢への刺激とストレッチングの併用効果について目標対象者数を達成するまで実験を継続するとともに,中枢への経頭蓋直流電気刺激とストレッチングの併用効果の検証も併せて行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した実験では,感覚の変化を惹起する末梢への刺激としてホットパックを用いた温熱療法とスタティック・ストレッチングとの併用により,介入後により大きな関節可動域増大効果が得られる可能性が示唆された。一方で,機器の故障により,予定していた対象者数を達成することができず,またその影響により中枢への刺激とストレッチングの併用効果検証に関する実験を行うことができなかった。2024年度は末梢への刺激とストレッチングの併用効果について目標対象者数を達成するまで2023年度に実施した実験を継続するとともに,2022年度末に導入された経頭蓋直流電気刺激装置の使用方法について引き続き習熟を行い,当初計画通りに中枢への経頭蓋直流電気刺激とストレッチングの併用効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は2022年度の次年度使用額が含まれていること,また実験の遅延により論文投稿に関わる費用が発生しなかったことにより,次年度使用額が発生した。2024年度は,まず2023年度に完遂できなかった末梢への刺激とストレッチングの併用効果の検証を継続して実施するとともに,当初計画の通り中枢への経頭蓋直流電気刺激とストレッチングの併用効果の検証を行う予定であり,実験結果をまとめて論文投稿する際の英文校正費や論文掲載料に次年度使用額を充てる予定である。
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