研究課題/領域番号 |
22K11330
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
上野 浩司 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (60725068)
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研究分担者 |
高橋 優 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40551049)
石原 武士 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60335594)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞外マトリックス / 可塑性 / マウス / 抑制性ニューロン / 行動実験 |
研究実績の概要 |
弱視や聴覚障害といった神経発達障害、統合失調症などの精神神経疾患の根本的な治療には、神経可塑性の回復(脳内の神経回路の再編成)が必要である。しかし、現在のところ神経可塑性を回復させる治療方法は確立されていない。そのため、神経発達障害や精神神経疾患の根本的な治療薬開発は必要不可欠である。脳は生後早期に可塑性を失うとされており、その可塑性を制御している主なものとして細胞外マトリックス分子がある。本研究では、これまでの研究成果を応用し、既存の中枢神経作用薬の中から神経可塑性を回復させる効果のあるものを明らかにしたいと考えています。これにより、安全性が担保された中枢神経作用薬の中から神経可塑性の回復が認められるものを明らかにし、神経発達障害や精神神経疾患の新たな治療薬の確立につなげたいと思います。 フィンゴリモドは、多発性硬化症の治療に用いられており、その機能は、phingosine 1-phosphate (S1P) receptor antagonistである。フィンゴリモドは、血液脳関門(BBB)を通過できるため、ニューロン、星状細胞、ミクログリア、希突起膠細胞などの中枢神経系細胞に潜在的な影響を及ぼす。本研究では、フィンゴリモドの慢性的な投与が神経可塑性に関係するPV介在ニューロンとPNNの形成に与える影響を明らかにしようと試みました。 その結果、フィンゴリモドを投与されたマウスの海馬、前頭前皮質、体性感覚皮質において、PV陽性ニューロンの増加が確認されました。本研結果は,フィンゴリモドが現在用いられている多発性硬化症の治療以外にもPV陽性ニューロンに関連した精神神経疾患などにも応用できる可能性を示しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、多発性硬化症の治療のために用いられているフィンゴリモドの慢性投与が脳の可塑性に関連する分子への影響を調べることが出来た。実際にはマウスの行動の詳細な解析が出来ていないが,2023年度には詳細な解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は主に、抗うつ薬による神経可塑性増加に伴うマウスの行動解析と脳の組織学的解析を行う予定です。神経可塑性を高める可能性のある抗うつ薬の中でも、「フルオキセチン、シタロプラム」など報告のある薬を、成熟個体である10ヶ月齢のC57BL/6マウスに28日間腹腔内投与します。28日後には、マウスの行動解析と脳の組織学的解析を行います。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった行動実験機器とソフトウェアを試用した結果、本研究には適用できないことが判明した。そのため、現在は代わりの機器の選定を行っており、次年度の使用額が大きくなっている状況です。使用期限の短い試薬キットや免疫染色の試薬などの購入は、次年度にすることにしたため、次年度の使用額が大きくなっています。次年度の使用額は、情報収集を行うための学会旅費や特注の行動実験機器の購入、試薬キットの購入に充てる予定です。
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