研究課題/領域番号 |
22K11340
|
研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
濱口 豊太 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80296186)
|
研究分担者 |
田山 淳 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10468324)
小泉 浩平 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (60867274)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 過敏性腸症候群 / 内臓知覚過敏 / 体性感覚 / 脳波周波数解析 / Decoded Neural Feedback / Default Mode Network / セルフマネジメント |
研究実績の概要 |
本研究は、IBS有症状者の脳波パターンを解析し、DMNの機能結合強度を調整することで、IBS症状の軽減を目指す。2023年度は、過敏性腸症候群(IBS)有症状者の青年期女性40名を対象としたセルフケアの効果を、これまでに作成したIBS脳波判別装置で調査した。被験者はWeb-based e-learningを実施するe-health群と、IBSの情報リーフレットを渡され自然な生活を続けるcontrol群に分けられた。8週間の介入期間を通じて、被験者全員の安静時脳波を測定し、α波およびβ波のパワー値を周波数解析して両群間で比較した。さらに、歩行量と食生活も調査した。 実験手順は、青年期女性40名のIBS有症状者を対象に、e-health群とcontrol群に2つに分けた。e-health群はWeb-based e-learningプログラムを実施させ、control群はIBSに関する情報リーフレットを提供し、通常の生活を続けるよう指示した。脳波測定は、全被験者の介入前後において安静時脳波を測定し、周波数解析を行った。データ分析では、脳波周波数解析により、α波およびβ波のパワー値を計測し、net work analysisを用いて両群間で脳電極間機能的結合を比較した。追加調査として、歩行量と食生活の変化を記録した。 その結果、e-health群において、脳波成分にdefault mode network(DMN)の変更が確認された。歩行量および食行動には両群間で有意な差は見られなかった。Web-based e-learningシステムを用いたIBSセルフケアは、脳波の変化を引き起こす可能性があることが示唆された。一方で、歩行量や食生活には影響を及ぼさないことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳波解析用のアプリケーションの調整に時間がかかったこと。解析機材が材料不足により購入できず、入手するまでに時間がかかったこと。練習用アプリ開発が識別子ファイルの作成後の検証に時間がかかり、滞ったこと。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、(1) IBS有症状者の内臓知覚の認識過程(self-referential processes: SRP)の特徴を電気生理学的に検証し、(2) IBS症状を軽減させるためのDecoded Neural Feedback(DecNef)練習装置の開発とその効果検証を行うことである。本研究は、IBS有症状者の脳波パターンを解析し、DMNの機能結合強度を調整することで、IBS症状の軽減を目指す。具体的には、携帯型セルフケアシステムを開発し、その実用化可能性を探るための実証実験を行う予定である。このシステムを用いて、被験者自身が脳波を調整し、症状を自己管理できるようにすることを目指している。 2023年度までに、脳波測定と解析を行い、セルフケア練習としてWeb-based e-learningプログラムを実施し、被験者の脳波が調整されたことが確認できた。2024年度は、脳波の変化、歩行量、食生活のデータを解析し、食行動を含む行動変化を誘導しつつ、IBS症状をセルフコントロールするための方略を記述していく。 本研究により、IBSセルフケアの新しいアプローチとしてWeb-based e-learningシステムの有効性が示されることが期待される。また、携帯型セルフケアシステムの開発により、IBS患者が自己管理できる方法が提供されることが期待される。将来的には、多施設無作為化比較試験を実施し、普及実装を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験謝金は被験者の脱落等を勘案していたが、最低限の被験者で実施したため、被験者謝金に余剰が生じた。
|